2024年12月23日(月)

トランプを読み解く

2019年3月23日

写真:ロイター/アフロ

 ここのところ、私の企業マネージャー研修カリキュラムには、「トランプ流の問題解決法」が事例学習としてよく取り入れられている。トランプ氏はビジネスマン出身だけに、大統領になっても経営者感覚で国の運営や外交に当たっている感が否めない。

 企業経営も国家運営も原理的に相通ずるものがあるが、本質的な違いは独裁と民主の体制基盤にある。資本主義制度下の企業は株主の所有物であり、その経営の権限を経営者に付与した以上、不正を牽制する監査機能があっても、経営上の意思決定は経営者の独裁ベースで行われるようになっている。

 トランプ氏はこの経営者スタイルを政治の場に持ち込んでいるので、メディアや学者など多方面から反感を買うのも無理はない。さらに経営者には、その独裁的立場からして、古来の「帝王学」あるいは独裁を前提とする統治技術にあたる「君主の政治学」を学ぶ必要が生じる。これは戦後の日本人経営者に欠落している部分でもある。

分断統治の手法

「Divide and Conquer」、日本語にすると「分割統治」という。これは「ヒト」と「コト」という2つの意味に分けて考察したほうが分かりやすいかもしれない。

 まず、「ヒト」。少数の支配者が大多数の被支配者に統治を行うにあたり、被支配者を異なる利益集団に分断することで、統治を容易にする手法である。被支配者同士を争わせれば、支配者に矛先が向かわなくなる。

 帝王学の「必修科目」である。ここでは「分割」よりも「分断」がより適切なので、私は「分断統治」という言葉を使っている。「分断統治」の起源は、デカルトの法則まで遡ることができる。一体化された集合体を、容易に問題解決ができるように、あえてできる限り細かなグループに分断(分割)する法則である。

 被支配者の連帯は力量の集結によって、支配者の地位を脅かす存在になり得る。古代ローマ帝国は、支配下に置かれた都市相互の連帯を禁じ、都市毎に応じて処遇に格差をつけ、このような「分断統治」によって、征服した都市からの反乱を抑えることに成功したのであった。19世紀以降の欧米の植民地経営もまた然り、この原理を応用した。

 逆方向の反統治側においても、「分断」の概念が用いられる。マルクス主義の唯物史観は、労働者階級と資本家階級の分断による階級闘争を中核として打ち立てられた理論だ。これはまさに、支配階級の打倒を目指す反対方向の「分断」であって、「分断」による「反分断」である。


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