トランプを読み解く

2019年3月19日

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立花 聡 (たちばな・さとし)

エリス・コンサルティング代表・法学博士

1964年生まれ。早稲田大学理工学部卒。LIXIL(当時トステム)東京本社勤務を経て、英ロイター通信社に入社。1994年から6年間、ロイター中国・東アジア日系市場統括マネージャーとして、上海と香港に駐在。2000年ロイター退職後、エリス・コンサルティングを創設、代表兼首席コンサルタントを務め、現在に至る。法学博士、経営学修士(MBA)。早稲田大学トランスナショナルHRM研究所招聘研究員。

 

トランプ米大統領と習近平中国国家主席の首脳会談が6月に延期される。3月16日付けの英字紙「サウス・チャイナ・モーニング・ポスト」が、消息筋の情報を引用し報じた。会談は当初予定の2月末から3月に、さらに3月から4月に幾度も延期したものの、4月も合意が困難となったようだ。

「マール・ア・ラーゴ」の悪夢

 習近平氏は3月下旬からイタリア、フランスを歴訪する。その前後に米国に立ち寄り、フロリダ州のトランプ氏の別荘「マール・ア・ラーゴ」を再訪し、米中貿易戦争を終結させるための首脳会談を行う予定だった。

 マール・ア・ラーゴは、トランプ氏お気に入りの私邸で、ここに招いた外国首脳は、安倍晋三首相と習近平主席だけだった。同盟国である日本の首相と同格に接遇される習近平氏には大変面目の立つ招請だったにもかかわらず、決して良い思い出を残してくれた愉快な場所ではなかったようだ。

2017年4月7日、会談後に別荘を散策したトランプ大統領と習近平国家主席(写真:ロイター/アフロ)

 米東部時間2017年4月6日夜、トランプ氏は習近平氏をマール・ア・ラーゴで行われる夕食会に招いた。メイン料理は、シタビラメのシャンパンソース仕立てとプライム熟成NYストリップステーキ。いよいよメインの食事を終え、習氏が美味しそうにデザートのチョコレートケーキを食べ始めたタイミングを見計らって、トランプ氏は切り出す――。

「主席にお伝えしたいことがあります。実は、たった今米軍がシリアにミサイルを撃ち込んだのです」

 化学兵器を使った連中にはそれ以外に方法はない。子供まで虐殺されたわけだから、攻撃に異を唱える理由はない。少なくともその場で即座に反論する道筋を立てる余裕は習氏になかった。絶妙なタイミングであった。

 2年前の「マール・ア・ラーゴ」での夕食会では、トランプ氏が勝利を収めた。その要因は多方面にわたるが、米側の交渉アプローチが入念に練られたことだけは間違いないだろう。

 前述の通り、トランプ氏は2017年2月に安倍首相を「マール・ア・ラーゴ」に招待した。習近平氏を同じ場所に招待したことで、習氏のメンツが大きく立てられた。日中間のトラウマと中国人のメンツ観が大きく利用された。中国側は絶対に首脳会談を失敗させたくない一方、メンツも保たなければならないと、緊張して米国に向かった。

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