WEDGE REPORT

2019年4月17日

»著者プロフィール
著者
閉じる

倉都康行 (くらつ・やすゆき)

RPテック代表取締役、国際金融評論家

1979年東京大学経済学部卒。東京銀行、バンカース・トラストを経て、チェース・マンハッタン銀行。2001年4月に金融シンクタンクのRPテック株式会社を設立。

 最近の為替市場や株式市場の慌ただしい展開に比べれば、国際通貨制度の動きは極めて緩慢である。10年前の金融危機の際には「ドルの信認低下」が世界中で騒がれたが、IMF(国際通貨基金)の統計によれば、昨年9月末時点での準備通貨におけるドルのシェアは61・9%と、ユーロの20・5%、円の5・0%、ポンドの4・5%を大きく引き離しており、事実上の「世界通貨」としての地位は揺らいでいない。

(ALEXLGETTYIMAGES)

 とはいえ、ドルの占める割合が徐々に低下していることもまた事実であり、2015年3月末の66・0%という水準から約3年半で4・1%のシェア・ダウンとなっていることを考えれば、今後一段と低下する可能性もないとは言えないだろう。

(注)ユーロは左から20%→19.1%→20.5%で推移 (出所)IMF資料を基にウェッジ作成 写真を拡大

 では、この間に準備通貨のシェアはどう変わったのだろうか(右図)。ドル以外の通貨をみると、ユーロは20・0%からわずかに上昇、3・8%と同水準にあった円とポンドはともに1%超の上昇となっている。豪ドルやカナダドルは1%台のシェアでさほど変わっていない。一方で16年12月末から公表開始となった人民元のシェアは、2年足らずの間に1・1%から1・8%まで伸びて、豪ドルを抜いている。カナダドルのシェアを追い越すのも時間の問題であろう。

 つまりドルのシェアを食っているのは、円やポンド、そして人民元といった通貨であることが分かるが、その変化のタイミングもまた重要である。しばらく65%台を維持していたドルのシェアが顕著に低下し始めたのが17年3月末以降であることは、トランプ大統領の登場が変化の一つの契機になっていると思われるからである。

進む新興国の「ドル嫌い」
逃避先は金と人民元

 トランプ大統領は就任以来、その政治的軍事的優位を利用して経済制裁をたびたび発動してきた。米財務省外国資産管理室を通じて実行された制裁件数は、10年の1000件から18年には6000件以上に急増した。中でも、ドルの使用を制限する金融制裁は極めて強力である。その対象国は、イランやベネズエラ、ロシア、そしてトルコなど敵対国から友好国まで幅広い範囲となっている。

関連記事

新着記事

»もっと見る