この熱き人々

2019年6月25日

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吉永みち子 (よしながみちこ)

1950年、埼玉県生まれ。85年、『気がつけば騎手の女房』で大宅壮一ノンフィクション大賞を受賞。著書に『母と娘の40年戦争』(集英社文庫)、『怖いもの知らずの女たち』(山と溪谷社)、『試練は女のダイヤモンド』(ウェッジ)などがある。

◉えんどう ともこ:1986年、神奈川県出身。大学で動物応用科学を学び、2009年より和歌山県白浜町の「アドベンチャーワールド」に勤務。翌年からジャイアントパンダを担当、これまでに5頭の出産に立ち会い、現在はパンダ飼育チームのリーダーを務める。
 
 
 

 白浜駅から車で約10分。動物園、水族館、遊園地が一体化した「アドベンチャーワールド」では、開園と同時に二方向の人の流れが生まれる。一つは4歳の双子のジャイアントパンダ桜浜(おうひん)と桃浜(とうひん)、2歳の結浜(ゆいひん)がいる「パンダラブ」へ、そしてもう一つは昨年8月に誕生した彩浜(さいひん)と母の良浜(らうひん)、父の永明(えいめい)がいる「ブリーディングセンター」へ。

 「あ~っ! いた」「動いてるっ!」「かっわいい~」「ウッソ~、マジでパンダじゃん」

 一目散に会いに来てマジもウソもないものだが、本物のパンダを目の前にすると、そんな反応が自然に感じられるから不思議だ。

 上野動物園で29年ぶりに元気に育っているシャンシャン(香香)が大人気だが、関西の人たちは「和歌山にはパンダがぎょうさんおるで」と言う。現在6頭が暮らすアドベンチャーワールドで生まれたパンダの赤ちゃんは、彩浜で16頭目。本場中国以外の飼育施設の中では世界一の繁殖実績を持ち、名前に「浜」の字がつく白浜生まれのジャイアントパンダは中国に帰った後に子供を産み、その子らが世界の飼育施設に渡り、「成都系」「北京系」と並び「浜系」という家系を構成しているという。

 2016年に中国で開かれた「ジャイアントパンダ繁殖技術委員会」で、老齢のパンダ永明についての報告を行ったのが、現在のパンダ飼育チームのリーダー遠藤倫子(ともこ)である。

 高い実績をあげてきたアドベンチャーワールドの飼育法では、母子が自然に乳離れ、子離れするまでの1年ほどは一緒に過ごさせる。授乳している間は発情が起こらないため、出産した翌年の交配をあきらめるということになる。

遊ぶのに夢中な彩浜

 「昔は絶滅の危機に瀕していたこともあり、数を増やすことが最大の目標で、毎年出産させるために子供を早く母親から離して人の手で育てていたんですね。でも母子で過ごす時間が短いと、大人になってから自然交配や子育てがうまくできないことがある。だから長い目でみれば母子で過ごす時間が長いほうが繁殖実績が上がるということなんです」

 ジャイアントパンダは大人になると単独行動をする動物で、母と離れた後はほかのパンダと接することはない。野生でも繁殖の時期のみ雌雄が一緒になるが、出会うチャンスは少ない上に相性が悪ければダメ。しかもメスの発情期は年に2~3日と短く、繁殖が難しい動物だが、それは人工飼育環境においても同じだ。

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