世界で火花を散らすパブリック・ディプロマシーという戦い

2019年5月17日

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桒原響子 (くわはら・きょうこ)

未来工学研究所研究員・京都大学レジリエンス実践ユニット特任助教

1993年生まれ。2012年米国ウエストバージニア大学において、国際政治学や通訳翻訳等を学び、2017年大阪大学大学院国際公共政策研究科修士課程修了。笹川平和財団安全保障事業グループ研究員、外務省大臣官房戦略的対外発信拠点室外務事務官を経て、現職。専門は、国際公共政策、パブリック・ディプロマシー、ストラジック・コミュニケーション、メディア研究、世論等。

2017年、NYの博物館に慰安婦像を設置した際の記念撮影の様子(写真:YONHAP NEWS/アフロ)

 「反韓人種差別、日本で上昇する、映像作家が語る」

 2019年4月17日、米国の一部メディアが報じた。記事は、米国ワシントンD.C.等に拠点を置くUPI(United Press International)のもので、日本国内の“Zainichi(在日)”に対する“Racism”、つまり在日韓国人に対する日本人の人種差別ぶりについて在日韓国人視点で報じていた。

 近年、ヘイトスピーチが国内外の社会的関心事となっている。ヘイトスピーチとは、特定の民族や国籍の人々等を地域社会から排除しようとする差別的言動を指す。とりわけ日本で行われているヘイトスピーチは、在日韓国人を対象にするケースが多いといわれている。こうした日本での動きについて一部メディアが報じるなど、米国で注目されているのだ。

 ヘイトスピーチの裏には、日本で広がりを見せる「反韓」や「嫌韓」という感情が根付いている。これまで日韓の政治・外交関係は冷え込んでいても、軍事関係は良好だといわれていたものの、昨年末の自衛隊哨戒機への韓国艦船レーダー照射問題もあり、現在では日韓関係は政・軍・民すべての分野で悪化してしまっており、ヘイトスピーチのみならず、ネットや書店に並ぶ書籍等において、「反韓」や「嫌韓」の論調は増加する一途である。

 繰り返される韓国による「反日宣伝」。日本で広がる「反韓」や「嫌韓」ムード。こうした状況下、日韓は各々国際社会の目にどう映っているのだろうか。そして、日本は韓国にどう対応していくべきなのだろうか。

国際社会は日本のヘイトスピーチを懸念

 はじめに紹介した、米国メディアUPIの記事は、元慰安婦で在日韓国人2世の朴壽南氏が映画監督を務めたドキュメンタリー映画“Silence(沈黙)” が米国で上映されたことがきっかけで記事になったと見られる。今年4月16日、米国ニューヨークに所在するボロウ・オブ・マンハッタン・コミュニティ・カレッジにて、同作品が上映された。記事によると、上映会に出席した朴氏の息子が、「日本政府は慰安婦動員の責任を否定し、この問題から立ち去ろうとしている」と語った。

 同記事には、ドキュメンタリー映画の公開直後、それに反発する形で生起したと見られる日本国内のヘイトスピーチの様子を撮影した写真が掲載されている。写真には、参加者が日本国旗や旭日旗を掲げ叫んでいる様子が映し出されている。米国の読者には、日本では外国人に対して威圧的なナショナリズムが高揚しているかのような印象を与えかねない。

 日本国内のヘイトスピーチは、法務省によれば、東京都新宿区大久保通り、神奈川県川崎市川崎区、大阪府大阪市生野区等で行われることが多いとされる。そのヘイトスピーチの対象の大半が、地域に住む在日韓国・朝鮮人だ。

 国際社会では、こうした日本におけるヘイトスピーチに懸念が示されており、国連人種差別撤廃委員会や自由権規約委員会から日本に対して注意勧告がなさるまでになった。これを受け、日本では2016年にヘイトスピーチ規制法が施行された。法務省によると、「祖国へ帰れ」とか「出ていけ」、さらには「ゴキブリ」といったような言葉がヘイトスピーチ規制法に定める規制に該当するとしているが、それでもヘイトスピーチの排除という、問題の根本的解決には至っていないのが現状だ。

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