WEDGE REPORT

2012年1月25日

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谷口智彦 (たにぐち・ともひこ)

慶應義塾大学大学院SDM研究科特別招聘教授

明治大学国際日本学部客員教授。2008年7月まで3年間外務省で外務副報道官。元日経ビジネス記者、編集委員、ロンドン外国プレス協会会長。著書に『同盟が消える日』(編訳、ウェッジ)など。(2013年1月末日現在)

10月27日、東京・晴海埠頭に海上自衛隊練習艦隊が帰って来る。
新米見習士官たちは、だいぶ大人になっただろうか。
夏の11日間、艦隊3隻に同乗して見た海自の姿─
見習士官を大人にする旅。
組織やマネジメント、忠誠のあり方へと興味をいざなわれた。

 護衛艦「みねゆき」では、日没後の灯火管制が厳しい。任官早々の見習士官を30人ほど積む練習艦となってはいても、それは臨時のこと。普段は現役戦闘艦だからである。

鉄ヘルとカポック(救命胴衣)をつけた筆者

 赤色灯を暗く灯しただけの廊下から急なラッタルを上がる。風圧が重くしたドアを静かに押し開け艦橋へ登ると、そこは一瞬にして闇だ。

 目が慣れぬまま当直士官や科員にぶつからぬよう左ウイングへ抜け、旗旒(きりゅう)甲板へ出る。漆黒の水面。

 はるか遠方に僚艦「かしま」と「あさぎり」の前部マスト灯が見える。速度を揃えて並走している。大西洋を原速(巡航速度)でひたすら南下中の8月下旬、22時頃のことだ。

戦闘艦「みねゆき」
22時に見上げた空

 見上げて、息を呑んだ。

 艦直上、天頂から南北へ文字通りミルクを刷毛で流したように、天の川が伸びる。正面に巨大なさそり座が蟠踞(ばんきょ)し、辺りには星また星。無数の瞬きに紛れ、一等星アンタレスの所在がすぐには判然しない。

カナダ・ハリファクス。出港前の公開日に大勢のカナダ人がやってきた

 筆者は8月13日から23日まで海上自衛隊練習艦隊に同伴、カナダ・ハリファクスを出て南下しカリブ海からパナマ運河を抜け、パナマシティで上陸するまで3艦の人々と暮らしを共にする機会を得た。大塚海夫海将補・同艦隊司令官のお招きにあずかってのことだ(注・所要旅費、食費と宿泊費は自弁した)。

 見習士官を、企業研修の用語を借りたのか「実習幹部」と言う。海自艦上の作業服は士官が濃紺色、科員とか乗員と呼ぶ下士官は明るめのブルーと、階級別になっている。

 実習幹部も三尉または二尉(専門職大学院を除く大学院卒修士で任官の場合)の士官であるから濃紺組だけれど、帽子だけは揃いの水色である。ヒヨコのしるしだ。

 3艦それぞれに、対潜ヘリやロープウエイ(艦と艦に渡す「ハイライン」)で移動しつつ、約180名の見習士官、それに艦の運用を支える科員の人々に都合8回、話をした。

 「あさぎり」後甲板に建つプレハブの講堂で水色帽子を集めて話したとき、海自の作法に則り拳をつくった右手を挙げた者があった。

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