海野素央の Love Trumps Hate

2019年7月17日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授、心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08~10年、12~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年及び12年の米大統領選挙においてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。著書に「オバマ再選の内幕―オバマ陣営を支えた日本人が語る選挙戦略」(同友館)など多数。

ホワイトハウスで米国製品をPRするトランプ大統領(UPI/AFLO)

 今回のテーマは、「中国、北朝鮮、イラン、メキシコ、ベネズエラ――どの国が最もトランプの票になるか?」です。20年米大統領選挙で再選を目指すドナルド・トランプ大統領は支持者を集めた集会で、うえの5カ国について言及し、それぞれの国に対する政策の正当性を訴えています。

 中国との貿易摩擦、北朝鮮の核・ミサイル開発、イランとの核問題、メキシコからの不法移民流入及びベネズエラの政情不安を、再選戦略の中に組み入れているからです。

 では、どの国がトランプ大統領にとって最も票の獲得に結びつくのでしょうか。本稿では大統領選挙の視点から5カ国を分析し、ランキングをつけてみます。そのうえで、再選戦略における同大統領の日本の位置づけについて述べます。

「反中国」支持者のつなぎとめ

 トランプ大統領は大阪で開催した習近平中国国家主席との米中首脳会談において、貿易協議継続で合意しました。その主たる理由がトランプ集会に参加すると見えてきます。

 これまでに筆者は、東部ペンシルべニア州モントゥアズビレ及び南部フロリダ州オーランドなどで開催されたトランプ集会で、参加者を対象に現地ヒアリング調査を実施してきました。トランプ支持者の共通点は、「反中国」の感情です。

 以前紹介しましたが、元建設業者の白人労働者(55)は、「中国は経済的に米国の脅威です。中国はこれまで米国を利用してきました。トランプは中国との関係を公平にしようとしています」と語り、トランプ大統領の対中政策支持を表明しました。

 米大統領選挙に突入したトランプ大統領には、中国との貿易摩擦を即座に解決せずに、20年11月3日の投票日までうえの白人労働者のような「反中国」の感情を持った支持者をつなぎとめていく思惑があります。「中国叩き」は票に直結するからです。

トランプ支持者の関心が薄い北朝鮮問題

 北朝鮮の核・ミサイル開発問題は、支持者のつなぎとめというよりも、米民主党のオバマ政権が上げることができなかった外交成果をアピールするという要素が強いでしょう。

 3回目のパンムンジョム(板門店)で開催された米朝首脳会談において、トランプ大統領は北朝鮮の「完全な非核化」を強調せずに、むしろ金正恩朝鮮労働党委員長との「信頼関係」及び「友情」を前面に出して、ハト派的なイメージを演出しました。

 トランプ大統領の最大の懸念材料は、完全な非核化ではなく、実は大統領選挙投票日直前の北朝鮮による核実験ないし中・長距離弾道ミサイル発射です。これがいわゆる「オクトーバー・サプライズ(10月の驚く出来事)」になって、選挙戦の行方に大きく影響を与えることを回避したいのです。仮にできないと、ライバルの民主党候補から「トランプ政権の対北朝鮮政策は完全な失敗」とレッテルを貼られます。

 トランプ大統領は支持者を集めた集会で、北朝鮮の核・ミサイル実験の停止を成果として繰り返し訴えています。となると、この状態を維持していくためには北朝鮮の核兵器及びミサイル生産の凍結が不可欠になります。

 凍結はトランプ大統領にとって、「外交成果の維持」になるワケです。こう考えると、現在トランプ政権内で浮上している凍結の議論には一定の説得力があります。

 ただ、トランプ大統領の本心は凍結による現状維持かもしれませんが、集会で支持者を対象にヒアリング調査を行うと、北朝鮮問題は中国との貿易摩擦並びにメキシコからの不法移民流入と比較して彼らの関心はあまり高くありません。

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