Wedge REPORT

2019年7月23日

»著者プロフィール

 今回は、アプリ開発、IoT事業などを行うITベンチャー企業and factory(東京都目黒区、正社員数88人、代表取締役社長 小原崇幹)の執行役員 梅谷雄紀さんを取材した。

(pinkomelet/gettyimages)

 and factoryは2014年に創業し、18年にマザーズに上場した。わずか4年で上場した背景には他社を圧倒する事業があり、それが近い将来、さらに伸びていくことが確実視されていることがある。

 アプリ開発、IoTへと事業領域を早いテンポで拡大してきた。特にスマホが普及することを早くから予測し、ツール系やゲーム攻略掲示板のアプリ「最強シリーズ」や着せ替えコンテンツ、漫画のアプリを独自で次々と開発し、ヒットさせてきたことで知られる。ツール系や漫画など複数のドメインで開発・運用していく中で培った独自のスキルやノウハウを社内で蓄積し、より大きな相乗効果を出させるようにしてきた。

 最近は、小学館や集英社、白泉社、日本文芸社などを始め、多くの出版社やコンテンツ企業と漫画や総合エンタメアプリで業務提携やジョイントを進める。一方で、スマートフォンひとつで、部屋の鍵、 照明、 空調などのデバイスを一元的に操作でき、近未来のIoT空間を楽しめるスマートホステル「&AND HOSTEL(アンドホステル)」を福岡、浅草や上野、秋葉原、神田など国内8店舗をオープンさせた。

 いずれの事業も、市場動向を確実に捉えて、成長が見込まれるドメインに対して、決め細かなサービスを着実に展開する。そして、スピーディーにPDCAサイクルを回し、次のステップに堅実に進めていくことに大きな特徴がある。

 さらに、それらを可能にした原動力が創業時のメンバーであり、現在も各部署で役員などとして中核を担う。小原社長の学生時代や前職からの知人で、ベンチャー企業の経営やマネジメント、アプリ開発を始め、各署の事業に精通し、実績を上げてきた精鋭だ。

 急成長する企業の中には社員の離職率が高い会社が少なくないが、同社は創業期から一貫して定着率が高い。執行役員の梅谷さんは人事部門の責任者として、新卒、中途の採用や定着、育成、さらに人事の仕組みづくりに関わってきた。

 採用においてはハンディを負うはずのベンチャー企業で、しかも、急成長する中、なぜ、優秀な人材を採用し、定着率を高くすることができたのか。そこに焦点をあてて、お話を伺った。

and factory執行役員 梅谷雄紀さん

「勝ち目のない試合」には参戦せずに、自分たちで採用手法を作る

 中心は、創業時からキャリア(中途)採用です。現在までに約90人を雇いましたが、現時点で辞めた人はほとんどいません。たとえば、創業1年目で10人前後採用し、5年目の現在、全員が在籍しています。この5年を振り返り、全社の離職率は例年約1.5%ほどです。

 定着率が高い理由の一つは、弊社のカルチャーを大切にした採用試験を続けていることだと思います。社長や役員がトップダウンで「こうするように」と現場に指示するのではなく、むしろ、各部署やグループ、個々の社員の考えや意見を尊重する社風なのです。

 カルチャーに合うと思える人を採用することを、弊社の特にHR部門では「エントリーマネジメント」と呼んでいます。中途採用はその方の経験やスキルがもちろん大切ですから、書類選考や複数回の面接を通じてきちんと確認をします。書類選考では、即戦力になってくれるであろうベースの経験やスキルに加え、弊社のカルチャーや価値観とのマッチングも重視しているのです。きちんとフィットしているならば、定着するはずと考えています。

 採用における母集団形成のノウハウなどは、あらかじめ心得ていました。例えば、ある程度の人数がエントリーしたうえで採用しないと、欲しい人材を獲得できないという、いわば確率論は確かにあります。私たちが創業直後に、大企業や一部のベンチャー企業のように多くのエントリー者を集めて選抜する手法を取り入れるのは難しかったのだろうと思います。

 一般論で言えば、創業期は、採用をするうえでハンディを負っているのかもしれません。弊社も会社のブランドがまだ十分ではなかったし、プロダクトも誰もが知っているメジャーなものではなかったのです。しかし、エントリー者数が少なかったとしても、求めるスキルやカルチャーにフィットする人が必ずいると信じていました。私が究極の採用(理想の姿)としているのは、例えば10人を採用しようとして、エントリー者が10人だった時、全員が入社後、確実にフィットし、定着し、活躍することです。

 創業期は、大企業や一部のベンチャー企業と母集団形成やエントリー者数で競い合うような「勝ち目のない試合」には参戦しませんでした。むしろ、どこの市場で勝負するかを決めて、自分たちで大事にしたい指標(「転職理由が他責ではなく、前向きな転職である」など)や採用における約束事(「1次面接で、人事責任者と事業部責任者がカルチャーフィットするかどうかを確認する」など)を作ることを大切にしたのです。母集団形成やエントリー者数に必要以上にこだわるよりは、何よりもマッチングを重視しました。

 通常、採用活動は主に二つあります。一つは会社側からアプローチし、リクールティングする手法と、もう一つはこちらが特別に何をしなくとも、ブランド力があるから、自然にエントリーする人が現れるパターンがあります。

 創業当時は、後者の場合はほとんどないと私は考えていましたから、一つ目の手法、いわばダイレクトリクルーティング(企業から、人材にアプローチを行う採用手法)を重視しました。言い換えると、「この人と私たちとは価値観などがマッチングするのではないかな」と仮説を立ててアプロ―チをして、その後、面接などで確認するのです。結果として、入社後にミスマッチになる可能性は低くなると思います。現在までのところ、この手法が概ね上手くいき、事業が順調に成長し、働きがいのある組織になっています。

関連記事

新着記事

»もっと見る