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2019年9月9日

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英ジョンソン政権の重要閣僚、アンバー・ラッド労働・年金相(56)が7日、ボリス・ジョンソン首相によるブレグジット(イギリスの欧州連合離脱)政策を批判し、閣僚を辞任し、与党・保守党を離党した。政権への造反を理由に除名された21人や、ジョンソン首相の弟に加え、保守党議員や閣僚がブレグジット政策を理由に党を離れるのはこれで23人となった。

テリーザ・メイ首相の政権で内相と労働・年金相を歴任し、ジョンソン政権でも留任していたラッド氏は首相宛の辞表で、「そもそも入閣に同意したのは、『合意なし』を選択肢として残すのは、10月31日までに離脱協定をまとめて離脱するため、それが最善の方法だと受け入れたから」だとしつつ、「合意と共に離脱することが政府の主要目標だとは、もはや信じていない」と批判した。

「政府は『合意なし』の準備にたくさんのエネルギーを費やしているが、欧州連合との協議には同じような熱意が見当たらない。欧州連合は、アイルランドのバックストップに代わる取り決めの提示を、我々に求めているのだが」とラッド氏は、ジョンソン政権が実際には欧州連合(EU)と前向きに離脱条件を協議していないと指摘した。

その上でラッド氏は、ジョンソン首相が「有能で、(国全体に)忠実な一国保守主義の」保守党議員21人を除名したやり方を、「品位と民主主義への攻撃」と呼び、同僚議員たちの「間引き」によって、「視野が広く、熱心な保守党議員たちが党から一掃されてしまった。私はこのような政治的破壊行為を支持できない」と非難した。

2016年の国民投票でEU残留を支持したラッド氏はさらに辞表で、「もしこの党に、私のような穏健派の、中道右派保守の居場所がなくなるなら、この党は(総選挙で)勝てない」とも書いた。

ラッド氏の辞表全文はこちら(英語)

ラッド氏は8日にもBBCの番組で、政府はEUと新しい離脱協定について「正式な交渉」をしていない、「会話」をしているだけだと述べた。代わりに、政府による作業の8割から9割は、「劣った」合意なし離脱の準備に費やされていると話した。

新しい離脱協定策定への取り組みについて政府に問い合わせても、「1枚の要旨」のみが返ってきただけで、「まともな政策協議」が行われていないとラッド氏は述べ、ジョンソン首相の政策決定に重要閣僚が十分に参画できていないことを示唆した。

さらに、ジョンソン首相が来週から10月14日まで議会を閉会すると決めた際に、首相に提示されたはずの法的助言についても、閣僚は内容を知らされていないとラッド氏は話した。

番組のアンドリュー・マー司会者が、「ではこの国を動かしているのが内閣でないなら、いったい誰なのか」と尋ねると、ラッド氏は「もしその答えを知っていたら、私は首相やその人たちと会話を続けたかもしれない」とだけ答えた。

一方で、サジド・ジャヴィド財務相はBBCの番組で、閣僚たちはEUとの協定実現に「全力を尽くして」おり、改定された協定のため「とてつもない努力」を重ねていると話した。さらに、イギリスが合意なし離脱に向けて準備することで、欧州側は新協定を受け入れようと「意識を集中」させるだろうと述べた。

ラッド氏は英紙サンデー・タイムズに、もしも解散・総選挙となった場合は、無所属の保守派として出馬するかどうか検討することになると話した。

首相官邸によると、テリーズ・コフィー環境相が、後任の働・年金相になる。

BBCのジョナサン・ブレイク政治担当編集委員によると、ジョンソン首相は8日、ロンドン南東ケント州にある政府公邸に側近たちを集めた。「次の動きを協議するためかもしれない」とブレイク記者は伝えている。

閣僚辞任は続くのか

ジョンソン氏と保守党党首選を決選投票まで争ったジェレミー・ハント前外相は、ラッド氏の辞任および離党は「とてつもなく残念な知らせ」だと述べ、「自分が一緒に働いた中で、彼女ほど誠実で有能な閣僚はあまりいない」とたたえた。

ジョンソン政権のブレグジット対応に反発し、造反議員団を率いるかたちになったフィリップ・ハモンド前財務相は、「残念ながら保守党は、選挙で選ばれたわけではない顧問やよそものや侵入者たちに乗っ取られてしまった。連中は保守党を、幅広く寛容な集団から、極右団体に変えようとしている。悲しいことだが、これは私が参加した党ではない」とツイートした。

https://twitter.com/PhilipHammondUK/status/1170633949879635968


BBCのジョン・ピーナー政治副編集長は、ハモンド氏が批判しているのは明らかに、ジョンソン首相のドミニク・カミングス顧問だと指摘する。カミングス顧問は2016年の国民投票で離脱派運動の戦略策定の中心にいた人物で、その歯に衣着せぬ態度や物言いで知られている。

ピーナー副編集長は、ラッド氏のほかにも辞任を考えている閣僚が複数いるようだと伝えるが、その一方で、「世論調査をみれば保守党が支持を伸ばしている。(造反勢力一掃の)効果が出ている」と歓迎する閣僚もいるという。

ドミニク・ラーブ外相は英スカイニュースに、首相はEUを10月31日までに離脱するという自分の方針を閣僚は何があっても支持しなくてはならないと、全閣僚にはっきり伝えていると話した。

「みんなそれを受け入れたし、首相が一定の規律を復活させたのは正しかったと思う。そして、政権幹部からもそれを期待するのは正しいと思う」と外相は述べた。

一方で、最大野党・労働党のキア・スターマー影のブレグジット相はツイッターで、ラッド氏の辞任はジョンソン政権「崩壊」の表れだと書いた。

労働党のイアン・レイヴァリー委員長は、ラッド氏辞任は「誰も(ジョンソン首相を)信用していない」印だと言い、「首相は記録的な速さで影響力を失い、そのブレグジット計画はにせものだと暴かれた」と批判した。

野党・スコットランド国民党(SNP)の下院院内代表イアン・ブラックフォード議員は、「もはや支持も信用も残っていない」と首相に辞任を呼びかけた。

(英語記事 Amber Rudd quits cabinet blaming Brexit inaction

提供元:https://www.bbc.com/japanese/49630336

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