Wedge REPORT

2019年9月13日

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馬場未織 (ばば・みおり)

日本女子大学大学院修了後、建築設計事務所勤務を経て建築ライターに。2007年から平日は東京、週末は千葉県南房総市の里山の二地域で居住する。田舎暮らしなどをテーマに執筆活動を展開。南房総の里山と都市に暮らす人をつなぐNPO法人南房総リパブリックの理事長も務める。著書に『週末は田舎暮らし ~ゼロからはじめた「二地域居住」奮闘記~』(ダイヤモンド社)、『建築女子が聞く 住まいの金融と税制』(共著・学芸出版社)など。

 9月8日夜~9日未明に襲来した台風15号は、房総半島を直撃した。二拠点生活をしている筆者の、南房総の自宅もまさにそのエリア内。ということで10日、11日と現地に足を運んだ。自宅の復旧もあるが、広範囲での被災に加え、電気なし、電波なし、水も切ない状態で暮らす知人を訪ねたり、独居の高齢者に食料を渡したり、南房総市役所や館山市役所に足を運んだり、今できることをしている。

台風によりほとんど全戸の屋根瓦が崩れている(筆者撮影)

 また、11日に急遽、運営するNPO法人南房総リパブリックでサポートセンター(https://mb-republic.com/rescue_minamiboso/)を立ち上げた。

 今、房総半島、特に南房総エリアで起こっていること、欲していることを、思いつくまま読者の方々と共有したい。

全く景色の違う房総半島に行く道すがら

 房総半島に渡った途端、被害を目の当たりにする。

 へし折られたサイン、ひん曲がった看板、剥脱した外壁がそこかしこにある。屋根の被害が著しく、住人自ら屋根に上って被害状況を確認していたり、ブルーシートをかけようとする姿もある。知り合いがいて「おーーい」と手をふると笑って麦わら帽子を振り返して「元気元気―!いろいろ壊れただけー!」と朗らかな声がする。この声にホッとするが、実際、この家で暮らす状態は穏やかではないと察するに余りある。

 ふと遠くの山に目を向ければ、あれ?今までみっしりしていた山の稜線が、バーコード状にスカスカだ。そして足元を見ると、枝葉が道路一面に厚く降り積もっている。どれだけの風が枝葉を引きちぎったのだろう。倒れている木はそこかしこにあり、それをチェーンソーで玉切りして脇に寄せ、なんとか道を確保する姿もあった。

 ちなみに、自家発電できる店は強い。これは何の渋滞だろうと思ったら、開店できているガソリンスタンドへ押し寄せる車の列。そして、ほとんどの自販機がダウンしている中「ここは使えるよ」というところは行列。車で走るだけで、どれだけ何がないかがよく分かる。

電気が来るのと来ないのでは天国と地獄

 地域全体で大規模停電が続いているが、一部復旧したエリアもある。電気が来ると、コンビニやスーパーが開店する。物流は今もうあるので、開店さえすれば食べ物などはかなり行き渡るようになる。「もう寿司まで売っていた」という情報もあった。

 一方で、まだ電気が来ていないエリアはどんどん厳しい状況になっている。冷蔵庫の中のものはもうだいぶ前からダメになっている。また、8月よりも暑い台風後の気候、クーラーがまったくない中で復旧作業するのは本当に辛い。じっとしているだけで汗が滴り、屈強な大人でも熱中症と隣り合わせだ。

 わずかにスーパーで売られていて喜ばれたのは、パスタとパンだったとのこと。電気がなくても食べられるし、米ばっかりの中で変化がつく。一瞬で品切れに。

 市内の信号はほとんど真っ暗。大通りの交差点も、車同士が互いに頃合いを見計らってヌルヌルと進んでいく状況だった。これは怖い。

 ちなみに、11日夕方の時点では館山市役所は電気が通っていて、南房総市役所はまだだった。今、「あっちの市はちゃんとしていて、こっちの市はだらしない!」といったことは軽軽に判断しないでほしいと、個人的には感じた。電気のあるなしで、やれることが本当に違う。

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