2024年5月17日(金)

WEDGE REPORT

2020年5月22日

 個人的な対策にとどまらない。山崎氏は「テレワークやオンライン診療などでオンライン化が進む中、企業や病院のセキュリティー意識が低かった故に、日本国内でサイバー攻撃の危険性が多くの場所に存在している。あらゆるリスクを想定し、働き方だけでなくセキュリティーに関する企業や医療機関の体制づくりが求められる」と警鐘を鳴らす。

 新型コロナの感染はいつか終息し、企業や医療では今後さらにオンライン化が進む。ネットワーク環境だけでなく、サイバーセキュリティーに関する投資もどこまで進めることができるかが重要になるだろう。

【コラム】注目集まるサイバー保険
 
 サイバー攻撃の種類や数が増加していくにつれ、特に中小企業では対応が後手に回ることが多いのが実情だ。昨年末に日本損害保険協会が実施した、中小企業経営者らを対象にした意識調査によると、24%の経営者が「現在、サイバー攻撃に対する対策はしていない」と回答した。
 
 だが、全体の回答のうち約2割の経営者がサイバー被害にあった経験があった。「不正送金を促すビジネスメール詐欺やフィッシングサイト」「マルウェア」などの被害が多いという。そのうち、約7%の企業が総額1000万円以上の被害を受けたことがあると回答した。
 
 大手企業も含め、自社だけでセキュリティを盤石にするのは難しい。そこで、サイバー攻撃を受けた際の被害を補償する「サイバー保険」に注目が集まっている。損害保険ジャパンによると、今年2月の加入件数は対前年+約80%、3月の加入件数は対前年+約75%を記録した。
 
 同社のサイバー保険では、サイバーリスクに起因する事故が発生した場合の、データ復旧費用や他人へ損害を与えた場合の賠償責任などが補償される。また再発防止までの費用や、情報漏洩の恐れがある場合に発生の有無を調査する費用も補償する。

 テレワークが起因となった被害も補償範囲だ。テレワークによって、個人端末から企業のシステムへアクセスできることを想定に、個人所有端末を経由して企業のシステムがマルウェア感染などすれば補償の対象となる。ただし、テレワークで使用する個人所有端末自体の損壊やウイルス感染などの補償はない。

 同社の担当者によると、「セキュリティ投資へのコストおよび専門性が必要な人的リソースの観点から、大企業と中小企業でのセキュリティ投資への温度差は生じている」という。各自が最低限必要な対策を講じたうえで、巨額の損害に応じたサイバー保険で備えるという形が、企業防衛のあり方の1つとして拡大しつつある(文・編集部 濱崎陽平)。
Wedge6月号では、以下の特集を組んでいます。全国の書店や駅売店、アマゾンなどでお買い求めいただけます。
■コロナ後の新常態 危機を好機に変えるカギ
Part 1      コロナリスクを国有化する欧米 日本は大恐慌を乗り切れるのか?
Part 2      パンデミックで見直される経済安保 新たな資本主義モデルの構築を
Part 3      コロナ大恐慌の突破策「岩盤規制」をぶっ壊せ!
Part 4      個人情報を巡る官民の溝 ビッグデータの公益利用は進むか?
PART 5-1 大学のグローバル競争は一層激化 ITとリアルを融合し教育に変革を
PART 5-2 顕在化する自治体間の「教育格差」 オンライン授業の先行モデルに倣え
コロナ後に見直すべき日本の感染症対策の弱点
Part 1      長期化避けられぬコロナとの闘い ガバナンスとリスコミの改善を急げ
Part 2      感染症ベッド数が地域で偏在 自由な病院経営が生んだ副作用
Part 3      隠れた医師不足問題 行政医が日本で育たない理由

  
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◆Wedge2020年6月号より

 

 

 

 


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