田部康喜のTV読本

2012年9月5日

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田部康喜 (たべ・こうき)

東日本国際大学客員教授

福島県会津若松市生まれ。幼少時代から大学卒業まで、仙台市で暮らす。朝日新聞記者、朝日ジャーナル編集部員、論説委員などを経て、ソフトバンク広報室長に就任。社内ベンチャーで電子配信会社を設立、取締役会長。2012年春に独立、シンクタンク代表。2015年10月から東日本国際大学客員教授として地域振興政策を研究、同大・地域振興戦略研究所副所長を兼務。

 「最高の7年間でした」――社会面の白抜きの2段見出しが躍る。「あっちゃん AKB48卒業」の横見出しもついて。マイクを握って熱唱する写真のモデルは、アイドルグループのAKB48のトップだった、前田敦子である。

 8月27日、東京・秋葉原のAKB48劇場で、彼女は、女優に専念するためにグループを卒業するコンサートを開いたのだった。

コンサートのテレビ中継まで

  弱冠21歳の女性歌手の卒業コンサートは、社会現象となった。グループの本拠地である秋葉原のビルは彼女の大きな写真で覆われたようになり、街路には顔写真の列である。フジテレビのダウンタウンのレギュラー番組である「HEY!HEY!HEY! MUSIC CHAMP」は当日、特別番組として卒業コンサートを実況中継した。

 山口百恵やキャンディーズの引退コンサートは、バブル経済に向かう熱狂の時代の風景としてよく覚えている。「失われた20年」をあとから振り返るとき、「あっちゃん」の卒業コンサートを思い出すのだろうか。

 「HEY!HEY!HEY! MUSIC CHAMP」の特別番組の視聴率は、14%を超えて、前週の2倍だった。

「引退」ではなく「卒業」でもこの熱狂ぶり

 実況中継の前に、第1部として、前田とメンバーたちが思い出を語りながら、ヒットナンバーを歌う。第2部では前田を中心として、「会いたかった」、「フライングゲット」の初期のヒット曲から、「Everyday、 カチューシャ」、そしてラストソングは、「桜の花びらたち」だった。

 メンバーたちはかわるがわる、前田の思い出を語る。板野友美は感情のもつれがあったことをわび、直前に仲直りをしたことを告白する。第1期生のオーディションに落ちて、ファンに飲み物をサービスする「カフェっ娘」から昇格した、篠田麻里子は、前田が温かくメンバーに迎えてくれたエピソードを話したあと、抱きしめあって涙を流す。

 前田は終始、涙をこらえ、笑顔で卒業する思いを語り、そして、客席に感謝のお辞儀をしたあと、客席を背にしてメンバーに深いお辞儀をする。

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