世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2012年11月13日

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 このほどFRBが踏み切った第三弾の金融緩和「QEIII」について、FTを代表するマクロ経済記者のマーチン・ウォルフが同紙18日付コラムで消極的賛成論を、また、ハーバード大教授で金融論の泰斗であるマーチン・フェルドシュタインが27日付同紙オピニオン欄で反対論を述べています。

 まず、ウォルフの主張は次の通り。すなわち、金融緩和には確かにリスクはある。しかし、何もしないよりはましという理由で、意味がある。

 QEIIIの方向が示唆された、カンザスシティ連銀が中央銀行家たちを集めて例年開く年次シンポジウム(Jackson Hole会議)では、財政・金融政策総動員による「GDPターゲット」論が、「インフレ・ターゲット」に代わり得る、より政策効果の高いものとして注目を集めたが、これは、米国の現状に照らし非現実的だ。

 現実的には、中央銀行が出動する以外になく、これとて従前ほどの効果は挙げられまいが、来る、来ると警告され続けたインフレが一向に訪れない事実に徴しても、やらないよりましだ、と述べています。

 これに対して、フェルドシュタインの主張は次の通り。すなわち、今回の金融緩和は、向こう3年という長期に及ぶものとされ、その間、銀行間市場に供給されるマネーの総額は、1兆5000億ドルの巨額に及び得る。すでに短期金利はゼロ近傍、長期金利も歴史的低位にある中これをやることは、インフレと資産価格のバブルを招き、政策解除が必要となっても議会に止められインフレ昂進を招いてしまうという三重の意味で有害だ。

 住宅ローン金利は既に十分低く、住宅の新規購入件数も顕著に上昇している。大企業は、手元資金を潤沢に積み上げてもいる。クレジットリスクが低い家計は既に住宅市場に登場し終え、手元資金が足りない中小企業への融資は中小金融機関のバランスシート悪化を主因として滞ったままだという状況で、QEIIIはせいぜいのところ株価を上げることしかできないが、その効果も出尽くし感がある。

 出口が難しいリスキーな政策にがんじがらめにされたという点で、QEIIIに踏み切ったFRBと、イタリア・スペイン短期国債の買い取りに踏み切った欧州中央銀行(ECB)には類似性が認められる、と述べています。

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 紹介した論争は、過去20年近く、飽きるほど繰り返されてきたものと同工異曲です。同じ論争は日本において、日銀VS市中エコノミストの文脈でさんざん続いてきて、いまだに決着がついていません。広く言うと、これは「銀行学派VS通貨学派」の論争です。

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