2024年4月23日(火)

日本の漁業は崖っぷち

2013年1月22日

 ノルウェーもアイスランド同様に必要な産卵群(=種火)を残して、それを上回った分を漁獲枠として発給します。一旦、資源に減少傾向が見られると禁漁を行い、資源回復を待ちます。こうして近年では1994~1998年(5年間)が禁漁、1999~2003年(5年間)が解禁、2004~2008年(5年間)が禁漁、2009~2013年(解禁中)というパターンになっています。5年毎という決まりはなく、あくまでも資源の状態次第ですが、シシャモの資源は大きく変動するので、変動に合わせた漁獲枠の設定という考え方です。

 ここでも日本の漁業と大きく異なる点は「産卵する魚の資源は必ず残しておく」ということです。常に種火は残しておきます。そして、再度資源が低下して禁漁期間を設けたとしても4~5年経てば、再び資源が回復して漁獲枠が設定されることを、各国の買付業者は熟知しているのです。日本のように種火が消えてしまったのに気づいてから、再びあわてて火を起こすのには、相当の長い時間がかかり、大きな経済的な損失と水揚げ地の疲弊が起きてしまうのです。

 資源が激減してしまった東シナ海の漁場について『漁業という日本の問題』(勝川俊雄著)に次のような体験談が出ています。

(図3)東シナ海(=以西底引き、巻網漁業)での水揚げ推移
資源が激減してしまったままである様子が容易に分かると思います。 (出所:水産総合研究センター) 拡大画像表示

筆者の所属する三重大学では、毎年東シナ海でトロール操業の実習を行っています。筆者は2008年の航海に参加しました。何時間も網を曳いても、獲れるのは商業価値がないカニばかり。東シナ海は砂漠のような海になっており、かつての豊穣の海の面影は、どこにもありません。乱獲によって生態系が完全に変わってしまったので、今すぐ全面禁漁したとても、もう元の状態に戻らないかも知れません。(中略)自らの過去を真摯に反省したうえで、中国・韓国と共同で、国際的な漁業秩序を構築していく必要があります(図3)。

 まさに種火が消えてしまっている状態です。

史上最大のレイオフも
カナダのマダラ資源の回復

(図4)カナダ(大西洋)マダラ水揚げ推移
資源激減のため1992年から実質禁漁になって資源回復を待っています。20年経ってようやく回復の兆しが出てきたといわれています。
(出所:Millennium ecosystem assessment)  拡大画像表示

 日本の東シナ海で起こってしまった資源破壊と似たケースを一つご説明しましょう。20年間もの禁漁期間を経て、世界三大漁場のひとつであるカナダ(大西洋)ニューファンドランド沖のマダラ資源が、ようやく戻ってきているといわれています。

 1992年カナダ政府は400年続いていたマダラ漁の禁漁を決めました。このため、加工場が閉鎖され漁船は岸壁につながれたままになってしまいました。ニューファンドランド島の経済的な生命線が僅か一年で途絶え、700Mドル(約630億円)分の仕事がなくなってしまったのです。3万人以上の人が職を失い、カナダの歴史の中で最大のレイオフ(一時解雇)といわれています。禁漁は2年間程度と考えられていましたが、20年間かかりようやく回復の兆しが見えてきました。原因は、乱獲、資源管理政策の問題、環境の変化といったことが考えられていますが、乱獲が主因であったことは容易に想像できます。 (図4)


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