2024年4月20日(土)

Wedge REPORT

2013年3月11日

タブーに踏み込む医療改革

気仙地区の今後の医療・介護のあり方について打ち合わせる伊藤達朗・岩手県立大船渡病院長(左)と山村友幸・気仙広域環境未来都市医療介護プロジェクトコーディネーター

 山村さんは外資系経営コンサルティング会社のアクセンチュア、ボストンコンサルティング、上場企業の企業再生などを経て、宮田秀明・東京大学大学院工学系研究科教授の考えに共鳴し、宮田教授が設立した東日本未来都市研究会に参画。研究会が気仙環境未来都市構想のシンクタンクとなったのを機に、コーディネーターを引き受けた。

 「三陸は地元の人々が温かく、食べ物が美味しい。都会暮らししかしたことのない私は、QOL(生活の質)が大いに上がっています」と山村さんは笑う。とはいえ、手がける医療・介護は高齢化、医師不足など震災前からの課題が深刻で、解決は容易ではない。

 「復興の主役は地元の人。東京で専門家がピカピカの案を作って持っていっても、地元の人が理解できなければ動かない」。そう語る山村さんは、医師会、病院、介護サービス事業者、地域包括センター、県・市町村の担当者など、地域の関係者が一堂に会する協議会を立ち上げて議論を進めている。

 協議会メンバーからは次のような前向きな発言が上がっている。

 「末崎地区の医師は私1人。震災の被害も大きいが、医師不足は震災前から深刻だった。臨床研修制度の変更などで、大学病院の医局から若手が過疎地域に来なくなっている。

 震災をきっかけに、協議会で地域連携カルテを作って診療データを共有することや、ナースプラクティショナー(問診や投薬を行うことが認められた特定看護師)の導入、在宅医療、訪問医療の推進など、これまで医療界で反対が強かったことが議論されているのは良いこと」(滝田有・気仙医師会長)。

 「医師不足もあるが、この地域はもともとかなりの医師偏在がある。内陸・沿岸部という地域偏在もあるし、診療科間の偏在もある。病院間の機能分化と連携をどう進めるか、さまざまな疾患を幅広く診断できる総合医をどう育てていくか。本質的な課題に踏み込んでいかなければいけない」(伊藤達朗・県立大船渡病院長)。


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