2024年5月17日(金)

田部康喜のTV読本

2022年8月28日

 トラコは、少年を捕まえて、里美に告げる。「警察に連れていきますね。ひったくりの常習犯ですよ」と。

 里美は、少年に優しく話しかける。「どうして、盗みなんかしたの? わたしに話してごらんなさい。助けてあげられるかもしれない」と。

トラコは橋本愛の転機となるか

 橋本愛も26歳。本格的な俳優の道を歩んでいけるかどうかの分かれ道にたっている、と思う。

 「イヤミス」(読んで嫌な気持ちになるミステリー)の女王といわれる、湊かなえ原作の「告白」(中島哲也監督・2010年)の群像劇のなかで突出した演技で注目された。「桐島、部活やめるってよ」(吉田大八監督・12年)の演技も忘れ難い。

 「あまちゃん」のコンビ・のんと共演した「私をくいとめて」(大九明子監督・20年)の、イタリアに移住して、子どもを産もうとしている、のんの友人役も最近作のなかで、出色である。

 舞台の演技も印象深い。三島由紀夫の『近代能楽集』より「班女」(20年)は、東京・日生劇場で観た。

 俳優が飛躍するには、作品はもちろんのことながら、監督、演出家に恵まれることが必要である。橋本は、忘れ難い美貌を持った、そうした俳優のひとりである。

 「トラコ」に、戻る。おそらく、この作品もまた、後半から最終話にかけて、彼女の俳優としての転機になりそうな予感がする。

   
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