2024年5月10日(金)

経済の常識 VS 政策の非常識

2022年10月28日

 フィギア・スケートの羽生結弦選手の12月2、3、5日の青森県八戸市のアイスショーによって、普段は1泊4000円のホテルが10万円以上になったと聞いて、筆者は都市伝説だと思っていたのだが、どうも本当のことらしい(東奥日報「羽生結弦さん八戸公演、ホテル高騰 1泊10万円台設定も」)。地元事業者からは「10万円というのは前代未聞」との声も出ているという。とすると、旅行支援で需要が増えれば、ホテルは、遠慮なく料金を引き上げるだろう。

旅行支援は誰のためか

 そもそも何のために旅行支援に税金を投入しているだろうか。消費者のためにしているのであれば、本来の目的から逸れた政策である。しかし、旅行業者のためにしているのなら本来の目的を実現している政策である。

 日本のさまざまな支援制度とは、供給者および供給者の団体のためにしていることがほとんどである。ある農家から、「都会の人間は、農家は保護されていると思っているだろうが、農家が直接補助金をもらうことはまずない。農地の改良とか、農業機械の補助金とかはあるが、それは農家の手元には落ちず、皆、土木業者や農業機械メーカーやそれを斡旋する農協に行く」と聞いたことがある。これらの補助金も、土木工事価格や農業機械価格を高めていたに違いない。そう考えると、今さら、「補助金が旅行業者に行くのは趣旨が違う」と言うのはお門違いかもしれない。

 クーポンは、平日3000円、休日1000円と、需要の強い時は安く、需要の弱い時は高くなっている。これは、休日の繁忙期に客を集中させない工夫である。政府のすることも、ずいぶんと進歩したものだと喜ぶべきだろう。

   
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