2024年5月11日(土)

未来を拓く貧困対策

2023年1月15日

 2022 年 3 月時点でも 1773 万件が未解明となっている「消えた年金」問題。前編(4000万円が認定される可能性も)では、生活保護の現場で広がる年金申請支援の取組をお伝えした。後編では、「消えた年金」を取り戻す具体的なノウハウと、事業にかける現場の思いをお伝えする。

「消えた年金」問題の解決に本格的に取り組んでいる埼玉県北本市共生福祉課(Wedge)

 「For the others グループ」代表で社会保険労務士の美原将也さん(46歳)によれば、調査対象者の 3 人に 1 人に年金支給漏れが見つかるという。

社会保険労務士ならではのノウハウ

 「誰にでも起きうるのは、名前の読み方が間違って登録されるケースです。茂木さんは『もてぎ』とも『もぎ』とも読めますよね。幸子さんは『ゆきこ』とも『さちこ』とも読めます。このような名前では誤入力が起こりやすくなります。生年月日が間違って入力されていることもあります。

 名前の読み方を変えたり、生年月日を特定の日付ではなくある程度幅を持たせたりすることで年金記録がヒットすることがあります。

 結婚して姓が変わっている場合には、旧姓と新姓の両方で登録を確認すると、記録がでてくることもあります。専業主婦の期間は、保険料なしで加入期間に合算できる場合ができます」

 転職を繰り返しているケースでは、職歴のすべてで名前の読み方や生年月日が誤っている可能性がある。年金法改正によって必要加入期間が 25 年から 10 年に短縮されたことを知らない人も多い。その一つ一つを確認し、要件に一つでも合致すれば、年金支給漏れとして増額となるのである。

 日本年金機構のウェブサイトでは、「記録のもれが多く発見されるパターン例」として、転職が多い、姓(名字)が変わったことがある、色々な名前の読み方があるという 3 つが 9 割を占めていると説明している(図表 1)。

 しかし、こうした問題があることを知っている人は多くはないだろう。まして、請求のノウハウなど知る由もない。


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