2007 年、誰のものかわからない年金記録 5095 万件の存在が発覚した。いわゆる「消えた年金」問題である。22 年 3 月時点で未解明は 1773 万件、3 件に 1 件は誰の年金なのかがわかっていない。調査の結果、年金の支給漏れが判明して 4000 万円が認定される可能性も。難題に挑戦する社会保険労務士の活動を追った。
30年以上支給されなかった年金
「99 歳の女性で無年金でした。旧姓で改めて年金を調べたところ、新たな加入記録が見つかりました。65 歳にさかのぼり、34 年間分の年金が一括で支払われることになりました。その額が約 2300 万円です。
年金には支給年齢を繰り下げた期間によって年金額が増額され、70 歳まで支給を遅らせると 1.42 倍になります。さらに大正生まれの人では特例があり、倍率が 1.88 倍に跳ね上がります。このケースで認定されると、最終的な支給額は約 4000 万円になる可能性があります。社会保険労務士という専門家が調べることで、本人の人生ががらりと変わるのです」
インタビューに答えていただいたのは、社会保険労務士の美原将也さん(46歳)。社会保険労務士業や教育業を営む「For the others グループ」の代表を務める。
事業の柱としているのは、自治体を対象とした年金調査・申請代行による生活保護適正実施推進事業。厚生労働省が生活保護費の削減などを目的として自治体に補助をしている事業である。
「For the others グループ」は、2017 年度の埼玉県北本市からの事業委託を皮切りに対象自治体を拡大。現在では、埼玉県庁をはじめ 7 団体から委託を受けている。21 年度は、事業による生活保護費削減額は約 3.5 億円にのぼる。その削減額の大半は、年金支給漏れや新たに年金を申請したことによって得られたものである(図表 1)。