2024年12月15日(日)

Wedge OPINION

2022年7月22日

岸田文雄首相の目に、次世代を担う子どもたちはどのように映っているのだろうか(2022年5月12日、東京都中央区立新川児童館) (THE MAINICHI NEWSPAPERS/AFLO)

 少子化や虐待、貧困といった子どもに関する社会課題解決の〝司令塔〟としての役割が期待される「こども家庭庁」の設置法案が6月15日、衆参両院の可決をもって成立した。2023年4月1日に内閣府の外局として創設予定である。先般行われた第26回参議院選挙でも各政党がこぞって子育て支援策を打ち出したが、少子高齢化が加速する日本にとって少子化対策が喫緊の課題であることに異論はないはずだ。

 「出生率が死亡率を上回るような変化がない限り、日本はいずれ存在しなくなるだろう」との発言がSNS上で話題となった米テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が指摘したように、少子化対策はわが国にとって〝国家存亡をかけた命題〟といってもよい。では、目的がはっきりしているにもかかわらず、結果が伴わないのはなぜか。それは少子化対策や子ども・子育て支援といった分野が身近なテーマであるがゆえに、これまで多くの政治家や国民それぞれの「理念」や「主観(個人の経験)」で語られることが多く、国全体にとって真に有効な対策とは何なのか、といった核心の議論が煮詰められてこなかったためである。国内外を含め、多くの子育て支援策の効果検証を広く実施してきた筆者の立場から、今後の日本における少子化対策の方向性を示したい。

出生数の回復に向かう海外
減少傾向が止まらない日本

 対策を論じる前に、現状についてみてみよう。厚生労働省が6月3日に公表した最新の人口動態統計によれば、2021年度に生まれた子どもの数は81万1604人で、前年度から約3万人減少し、6年連続で過去最少を更新した。20年度以降、従来の下降トレンドが加速した要因に新型コロナウイルス拡大の影響があることは論を俟たないが、注目すべきは海外と比較した足元の動きである。

 日本以外の先進国では、出生数、出生率ともに減少期から一転、上昇する動きがみられるが、この動きはある程度事前に予想されていた。なぜなら20年以降の減少はコロナ禍の不安から婚姻や出産を一時的に見送ったことに起因するため、需要自体が喪失したわけではないからだ。いずれ頃合いを見計らった時期にその需要は回帰するだろうと考えられていた。ところが、他の先進国と比較して日本だけが出生数、出生率ともに回復の兆しがみられない。これはコロナ禍における海外渡航や経済活動の再開、そして身近なレベルでいえばマスク解除についても日本が遅れていることと関連しているように思う。筆者はコロナ禍で一時的に見送られた婚姻や出産が、日本国内の不安が定着・長期化することで復帰の時期を逸し、そのまま需要自体が喪失してしまうことを危惧している。


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