オトナの教養 週末の一冊

2019年9月26日

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 共働き世帯が増えてきた。総務省の労働力調査によると、20歳から69歳の女性の「就業率」は70%を超え、10年前と比較しても1割以上上昇している。企業の働き方改革が進んだことで育児休職や時短勤務などの制度が充実し、子育てを理由に退職を余儀なくされる場面は少なくなった。

itakayuki / gettyimages

 育児に関する諸制度が拡充しつつある中で、「あまりに長い育児休職はむしろ逆効果になる」と『「家族の幸せ」の経済学 データ分析でわかった結婚、出産、子育ての真実』(光文社新書)を上梓した東京大学経済学部の山口慎太郎准教授は指摘する。同書は、うわさや伝聞による『子育て神話』を経済学の観点から明快に解説するとともに、データに基づく新たな知見を与える今話題の一冊だ。著者であり、結婚・出産・子育てなどを経済学的手法で研究する「家族の経済学」と、労働市場を分析する「労働経済学」を専門とする山口准教授に仕事と育児の両立をテーマにインタビューした。

――仕事と家事、育児の両立を目指すうえで、企業や個人が意識すべきことは。

山口:良い意味での『公私混同』が必要です。通勤時間や家事、育児のすきま時間に仕事をする。特に出張届や旅費の精算の事務作業、ちょっとしたメールの返信などをふと手が空いたタイミングでこなすことができれば、普段の仕事に余裕が生まれるでしょう。夕方に子供を保育園に迎えに行くために退社し、晩御飯を作り、子供を寝かしつけた後にテレワークで少し仕事を片付けるような働き方を選ぶ人もいる。そういった働き方の選択肢を増やすために、企業側はIT投資をしたり、タスクを作り替えたりといった取り組みが必要になってくるでしょう。

――育児休職、時短勤務など、育児に関する制度導入についてどう思うか。

山口:諸制度を拡充するのは良い方向性。たとえば育休がなかったとして、出産後の女性がフルタイムで働くことはほぼ不可能でしょう。また、日本の労働市場は正規就業へのハードルが高く、一度出産のために仕事を辞め、ブランクがある人がいきなり正社員として復帰することが難しいという現状があります。たとえば、「今年専業主婦である人が来年何をしているか」といった点を調べたところ、89%が専業主婦を続けており、残りの11%は仕事に復帰していますが、そのほとんどが非正規雇用です。1年後に正社員として働いている専業主婦は全体のわずか1%しかいません。育児に関する制度を利用することにより会社を辞めずに出産、子育てができることは日本の労働市場でキャリアを継続したい女性にとっては大きなメリットなのです。

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