保育を「福祉」ではなく
「幼児教育」として捉えよ
子育ての負担軽減のためには、保育について「福祉」ではなく「幼児教育」として捉え直し、制度を再構築する必要がある。現行制度では、例えば、0~2歳児を保育所に預ける場合、両親ともにフルタイムで働く家庭が優先され、専業主婦や自営業の家庭は優先度が下げられる傾向にある。コロナ禍では「親が家にいる」という理由で、テレワークに就く家庭の申請が却下されるといった事態も起こった。この根底にあるのは、本来「保育」は親が家庭で行うべきものであり、何らかの事情でそれがかなわない世帯に手を差し伸べることは「福祉」だという考え方だ。
一方、幼児期において、家庭よりも、同年代や保育士など複数の人たちと会話ができる環境に身を置くことで、幼児の言語能力がより発達するというデータもある。保育を「家で親が子どもの面倒をみれれば不要」とするのではなく、そういった家庭においても、週に数日でも「プロに預けることが教育上必要」といったものに位置付けることで、幼児の高い教育効果を生み、さらに育児者の家庭内孤立(育児ノイローゼなど)も防ぐことができる。
このように、少子化対策においてはまず、国全体として「出産・子育て」に関する従来の慣習や常識から脱却することが重要だ。社会の形が変化すれば、その中で営まれる子育てのあり方も変化する。客観的なデータや事実によってさまざまな価値感を持つ人たちの〝目線〟を合わせた上で、エビデンスに沿った子育て政策のビジョンを示し、国民の理解と協力を得ることが重要である。
(聞き手/構成・編集部 川崎隆司)
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