2022年10月6日(木)

Wedge OPINION

2022年7月22日

»著者プロフィール
著者
閉じる

山口慎太郎 (やまぐち・しんたろう)

東京大学大学院経済学研究科 教授

1999年慶應義塾大学商学部卒業。2006年米ウィスコンシン大学マディソン校で経済学博士号を取得。加マクマスター大学准教授等を経て2019年より現職。『「家族の幸せ」の経済学』(光文社)で第41回サントリー学芸賞を受賞。

保育を「福祉」ではなく
「幼児教育」として捉えよ

 子育ての負担軽減のためには、保育について「福祉」ではなく「幼児教育」として捉え直し、制度を再構築する必要がある。現行制度では、例えば、0~2歳児を保育所に預ける場合、両親ともにフルタイムで働く家庭が優先され、専業主婦や自営業の家庭は優先度が下げられる傾向にある。コロナ禍では「親が家にいる」という理由で、テレワークに就く家庭の申請が却下されるといった事態も起こった。この根底にあるのは、本来「保育」は親が家庭で行うべきものであり、何らかの事情でそれがかなわない世帯に手を差し伸べることは「福祉」だという考え方だ。

 一方、幼児期において、家庭よりも、同年代や保育士など複数の人たちと会話ができる環境に身を置くことで、幼児の言語能力がより発達するというデータもある。保育を「家で親が子どもの面倒をみれれば不要」とするのではなく、そういった家庭においても、週に数日でも「プロに預けることが教育上必要」といったものに位置付けることで、幼児の高い教育効果を生み、さらに育児者の家庭内孤立(育児ノイローゼなど)も防ぐことができる。

 このように、少子化対策においてはまず、国全体として「出産・子育て」に関する従来の慣習や常識から脱却することが重要だ。社会の形が変化すれば、その中で営まれる子育てのあり方も変化する。客観的なデータや事実によってさまざまな価値感を持つ人たちの〝目線〟を合わせた上で、エビデンスに沿った子育て政策のビジョンを示し、国民の理解と協力を得ることが重要である。

(聞き手/構成・編集部 川崎隆司)

 
 『Wedge』2022年8月号では、「歪んだ戦後日本の安保観 改革するなら今しかない」を特集しております。全国の書店や駅売店、アマゾンでお買い求めいただけます。
 安全保障と言えば、真っ先に「軍事」を思い浮かべる人が多いであろう。だが本来は「国を守る」という考え方で、想定し得るさまざまな脅威にいかに対峙するかを指す。日本人が長年抱いてきた「安全保障観」を、今、見つめ直してみよう。

◇◆Wedge Online Premium​(有料) ◆◇

 

  
▲「Wedge ONLINE」の新着記事などをお届けしています。

Wedge 2022年8月号より
歪んだ戦後日本の安保観 改革するなら今しかない
歪んだ戦後日本の安保観 改革するなら今しかない

安全保障と言えば、真っ先に「軍事」を思い浮かべる人が多いであろう。だが本来は「国を守る」という考え方で、想定し得るさまざまな脅威にいかに対峙するかを指す。日本人が長年抱いてきた「安全保障観」を、今、見つめ直してみよう。

新着記事

»もっと見る