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2021年12月1日

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高崎順子 (たかさき・じゅんこ)

在仏ライター

1974年東京生まれ。東京大学文学部卒業後、出版社に勤務。2000年に渡仏し、パリ第四大学ソルボンヌなどでフランス語を学ぶ。著書に『フランスはどう少子化を克服したか』(新潮新書)など。

「次世代を担う〝芽〟をいかに育むか」は、新型コロナ同様、世界共通の課題である (CATHERINE DELAHAYE/GETTY IMAGES)

 コロナ禍で少子化が加速する日本。2020年の合計特殊出生率は1.34、出生数は約84万人と5年連続の低下となった。自民党の総裁選では候補者4人が「子育て関連の予算を倍増する」と訴えたが、衆院選を終えた今、新政権はいかなる発想と姿勢で、この国難に臨むべきか。それを考えるために好材料となるのが、ここ20年で少子化改善に結果を出してきたフランスだ。

 フランスも日本同様、20世紀後半から合計特殊出生率の連続降下を経験し、1993年には1.66の最低値を記録した。しかしそこから後述するさまざまな国策を講じたことで、2010年には2.02まで数値を回復させている。その後は不況、連続テロ、気候変動など複合的な社会不安と新型コロナウイルス流行の影響を受けて微減が続き、20年の合計特殊出生率は1.84となっているが、それでも欧州連合(EU)トップ国の地位を維持している。

 フランスで「子どもが多く生まれている」という実態は、20年の出産年齢女性数と出生数で日仏を比較すると、より強く伝わるだろう。20~44歳女性の人口は日本・約1732万人、フランス・約1007万人と、700万人以上の開きがある。だが、同年の出生数は日本・約84万人、フランス・約74万人と、10万人しか違わないのだ。

 この驚くべき数字の差は、どこから来ているのだろう。歴史的背景や文化の違いなど要因はいくつでも挙げられるが、中でもシンプルで納得度の高い、明白な事実がひとつある。それはフランス政府が日本政府よりずっと多く、子育て支援に公的資金を注いでいるということだ。

 経済協力開発機構(OECD)がまとめた国際比較によると、フランスは対国内総生産(GDP)比において日本の2倍近く、児童手当や育休制度、保育サービスなど育児支援政策に公費を支出している(下図参照)。そうしたバラエティー豊かな現金給付・現物給付を行うとともに、出産関連医療費の無償化や減税・控除など、子持ち世帯の経済的負担を減らす策を実施している。まさに万策を尽くし、国民が不安少なく産める・育てられると思える環境を作り上げているのだ。

「子どもを持つこと」の将来不安が解消されれば、少子化問題は自ずと改善に向かう。実際、現在のフランスには「少子化対策」を冠する政策パッケージは存在しない。子育て支援の各種制度は「家族政策」の名の下に編まれ、関連の法律には、「少子化対策」の表現が用いられることもない。

「子どもを育てる」ことで
生活が行き詰まらないように

 多額の予算を投じ、あの手この手で繰り出されているフランスの家族政策には、共通する特徴がある。それは「国民に分かりやすい形で整備されている」ということだ。子どもを持てば国に助けられる、支援が得られるという国のメッセージが、明確に伝わる制度設計がなされている。

 例えば金銭面での支援を見ていこう。象徴的な支援が、子どもの数が増えるにつれて親の所得税負担が軽くなる「N分N乗方式」の課税だ。フランスの所得税は世帯単位の課税で、子どもが1人増えれば頭数0.5人分、税率が下がる。この仕組みのおかげでフランスの納税者は、子どもを持つことで増える生活費と減る税負担を、相殺して考えることができるのだ。その他、子どもを3人以上養育した親は年金受給額が10%増える年金加算制度も存在する。

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