2024年5月20日(月)

World Energy Watch

2023年8月15日

 通常の事業であれば大きなリスク要因は販売価格だが、FITでは買取価格が太陽光事業であれば、20年間保証されている。販売数量も1年を通してみれば日照時間あるいは風況が変わることはなく、これも保証されている。

 操業、保守費用もほとんどかからない。となれば、初期投資額が決まれば収益率はほぼ確定だ。入居者の心配をしなければならないアパート経営よりも確実な投資だ。

 中にはFIT事業として認可された後、事業の開始を遅らせ設備費が下がるのを待つ事業者まで現れた。初期投資額が収益率を決める以上、投資額が下がれば収益率はさらに上がる。

 さすがに、これはまずいという声が出てきてFITは手直しされた。見直しの一つが大規模設備についての入札制度の導入だ。募集する設備量を入札する。最も安い価格を提示した事業者がその設備を建設し、電気を落札価格で売る。これであれば、消費者が再エネ導入の賦課金額として電気料金で負担する額は抑制される。

消費者はどれだけ負担したのか

 入札制度以外のFITの買取金額は、毎年度設備費の下落などを反映し見直しされている。買取単価は下落しているが、設備と発電量が増えているので買取総額は増加する一方だ。

 一方、私たちが電気料金で負担する再エネ賦課金額は、今年度下落した。その理由は発電用燃料価格の上昇だ。

 再エネ設備からの発電があると火力発電設備の発電量が減少し、燃料費が節約できる。買取価格から節約できた燃料費を「回避可能費用」として減じた額が、電気料金の賦課金額として負担される。計算方法は図-1だ。

 エネルギー危機により燃料費が上昇したが、それでも賦課金額の負担がなくなることはない。12年度の制度導入以降の買取額と負担額の推移は図-2の通りだ。

 制度開始以降2022年12月までの累計では、再エネ電源からの買取量7037億キロワット時(kWh)、買取額は23兆8200億円。事業用の太陽光発電設備が約6割を占めている。風力発電については676億kWh、1兆5381億円だ(表-1)。

 脱炭素のため再エネ設備導入量をさらに伸ばす必要があり、30年度の水力を含む再エネによる発電量シェア目標は36%から38%に設定された。21年度の実績20.3%を大きく伸ばす必要がある。その目玉と期待されるのが、今はほとんどない洋上風力発電設備だ。


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