2024年5月17日(金)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2023年9月22日

 投資用ではなく、自宅用マンションを購入する人が多い理由は、従来から報道されている通り、中国国内の要因が大きい。21年ごろから厳格なゼロコロナ政策を実施していた中国では、22年3~5月に上海でロックダウンを行ったが、こうした問題や、21年から実施されている「共同富裕」(ともに豊かになるという政策。格差是正が目的で、大手IT企業や富裕層、芸能人などがターゲットになっている)の影響、さらに、経済悪化なども関係している。

 上海のロックダウン中から、中国では「潤」(ルン=移民するという意味の隠語)という言葉が流行した。これら複数の要因によって、中国を脱出し、海外移住する人が増加しているのだ。

やはり売りは距離的、文化的近さ

 執行役員COOの楊氏によると、海外移住をする人の中でも、とくに日本を選ぶ人が多い理由として「日本のコスパのよさ」「日本好き」を挙げる人が少なくないという。

 「日本には中国よりもミシュランの星つきレストランが多く、世界中の美味しい料理が安価で食べられます。爆買いブームのあと、コロナ禍前まで、中国から毎週末、2泊3日の弾丸旅行で日本にやってきて、日本の美味しい料理を食べて帰り、日本ファンになったという経験を持つ人もいました。

 また、距離的にも文化的にも近く、在日中国人も多く、便利なことから、これまで日本との接点がなかった富裕層でも、日本が好きになったという人が増えています。近いので、何かあったとき、日本からすぐに中国に帰ることもできるという点でも安心感があるでしょう」(楊氏)

 楊氏によれば、日本での不動産購入希望者が多いことから、同社は今後、コロナ禍でできなかった日本への投資セミナーやイベントを中国各地で開催したいという。また、現在、日本には76万人に上る在日中国人がいるが、「在日中国人富裕層を中心とした新しいネットワークづくりにも取り組みたい」と話している。

中国について、さまざまな視点から伝える連載「チャイナ・ウォッチャーの視点」の記事はこちら

   
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