2024年5月17日(金)

脱「ゼロリスク信仰」へのススメ

2023年12月8日

食事の調査はなぜ困難なのか?

 「日本人の食事摂取基準」では摂取量の把握がなぜ困難なのかを説明している。食事調査の多くが対象者による自己申告だが、男性はエネルギー摂取量を11%過少申告し、女性は 15% 過小申告するという。

 年齢ごとに比較すると幼児期では過大申告、小児期から成人期では過小申告がある。さらにBMI が低いやせ型の人は過大申告、BMI が高い肥満型の人は過小申告の傾向がある。

食事の量の調査結果。縦軸は食事の量(エネルギー摂取量・自己申告)とその人のエネルギー消費量の比率
(出所)「日本人の食事摂取基準2020」を基に筆者作成 写真を拡大

 この状況を図にすると、一定の体重を保っている人はエネルギー摂取量と消費量が等しいので実線のような関係になるはずである。実際に第三者が食事の量を観察した時(●)には実線とほぼ一致している。

 ところが自己申告の結果をプロットすると点線のように実線とは大きく外れ、やせ型の人は摂取量を多めに申告し、肥満型の人は少なめに申告している。そしてBMI が大きく人ほど過小申告の程度は大きくなる。

 これは人間の心理としてよくわかる。やせている人は「ちゃんと食べています」と申告し、太っている人ほど「そんなに食べていません」と申告するのだ。しかしこれでは調査にならない。これが摂取量の把握が困難な理由であり、多くの疫学調査に付きまとう深刻な問題である。

「砂糖=高カロリー→肥満」ではない

 結局、砂糖は肥満の原因なのか? 答えは「おそらくそうではない」ということになる。分かっていることは、世界的に肥満と生活習慣病が増加していること、肥満は食べすぎによるカロリーオーバーが原因であること、砂糖の消費量は減っているが異性化糖の消費量が増えていることだ。

 では、砂糖自体が肥満の直接的な原因でないにしても、砂糖の「甘味」が食欲を増進しているのではないか、加工食品の甘未成分として使用されている果糖が肥満を引き起こしているのではないか、という疑問も出てくるだろう。次回は、そうした部分も検証してみたい。

連載「脱「ゼロリスク信仰」へのススメ」の記事はこちら。

   
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