2024年5月17日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年4月17日

 ISIS-Kが同じイスラム原理主義のタリバンを攻撃するのは非イスラム教徒には分かり難いかも知れないが、ISISにしろ、ISIS-Kにしろ、これらのイスラム過激主義者は、サラフィストと呼ばれ、厳格なスンニ派のイスラム教を信仰していると言えば聞こえは良いが、要するに自分達と違う信仰を力ずくで排除しようとする狂信者の集団である。

 彼らにとり、タリバンは自分達より純粋なイスラム原理主義者ではないと見なして排除すべき対象となる。1月にイランでの自爆テロが起きたのは、やはり、イランがシーア派だからだろうし、ロシアの事件は、ロシアが歴史的に中央アジアを蚕食し、最近ではシリア内戦でアラウィ派のアサド政権に味方しているからであろう。自分達以外は、宗教、宗派を問わず、全て攻撃の対象となっている。

 なお、近年は穏健化が進んではいるが、教義的にはサウジアラビアのワッハーブ派もサラフィストに分類される。今のサウジからは想像出来ないが、過去にはサウジはシーア派の聖地であるイラクのカルバラを攻撃したことすらある。

一匹狼型のテロの可能性

 現在、ISIS-Kの活動が活発化しているのは、何時の世にも一定数の狂信的なイスラム過激主義者が存在し、彼等をISIS-Kが惹きつけており、ISIS-Kも勢力を拡大するために耳目を引くテロを行って、彼等を集めようとしている、ということだろう。

 ISIS-K自体はアフガニスタンと縁のある地域(イラン、ロシア、パキスタン等)外でのテロ遂行能力は高く無いと想像されるが、ISIS全盛期にも欧州で一匹狼型のテロが頻発したように、今後、ISIS-Kのテロに触発されて一匹狼型のテロが欧州で再び活発化する恐れがある。今夏のパリ・オリンピックは、ISIS-Kとその同調者の格好の標的であろう。

歪んだ戦後日本の安保観 改革するなら今しかない ▶アマゾン楽天ブックスhonto

   
▲「Wedge ONLINE」の新着記事などをお届けしています。


新着記事

»もっと見る