2024年4月25日(木)

日本の漁業は崖っぷち

2014年6月2日

 グラフのTACがABC(生物学的許容漁獲量)を超えているのを見ると、客観的に言ってこのままでは資源が回復する見込みはほぼなく、さらに厳しい状態が続くことが懸念されます。まさに悪循環です。自主的な資源管理が行われていたとしても、それが十分でないがために何年もかけて資源は悪化して行き、回復が困難になっていると考えられます。その問題が指摘されない、そこに問題の本質があるのです。

アラスカ・ベーリング スケトウダラのTACと実際の漁獲量
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 お小遣い(漁獲枠)をあげ過ぎていた親(国)のお金(スケトウダラの資源)が無くなっているということです。子供(漁業者)は子供なりに考えて(自主管理)お金を使っていました。しかし、そもそもお小遣いの金額(漁獲枠)が大きすぎたのかもしれません。いつの間にか、兄弟(他の漁業者)に使われて(漁獲されて)しまったことも考えられます。これは果たしてお金を使い続けた子供だけが悪いのでしょうか? 親が払い続けられる金額(持続可能になる数量)で、お小遣いをそれぞれの子供に分けてあげれば良かったのです(個別割当制度の実施)。

 資源管理が成功しているアラスカのスケトウダラの資源管理は右表の通りで、資源も水揚げ数量も安定しています。また、水産エコラベルの認証も受けているのでサステイナブルな魚として、欧米そして日本にも広く受け入れられています。同じスケトウダラでなぜこのような違いが起きるのか? 残念ながら、前述のイカナゴと同じですが、これこそが、インプットコントロールと自主管理の限界なのです。

アウトプットコントロールに重点を置く漁業先進国

 世界と日本がずれてしまっている原因の一つに、管理方法に対する考え方の違いがあります。漁業先進国は、アウトプットコントロール(出口規制)に重点を置いています。インプットコントロール(入口規制)ももちろん重要ですが、あくまでも補完的な役割で、肝心なのはアウトプットコントロールという認識です。

 どれだけの産卵する魚を残せば、資源が持続的になるのか? それがポイントです。インプットコントロールで漁期、禁漁区、網目、船の大きさや漁具を規制及び管理を設定することは重要です。しかし、それらを規制した後は「自由競争で腕次第!」では、何年やっても資源の回復は見込めません。

 2013年の12月に世界銀行が出した2030年の海域(一部国)ごとの水揚げ量は、全体で23.6%の増加。しかし何と日本だけが9%のマイナス成長と世界との「大きなずれ」が指摘されています(第18回参照)。水産業に直接関係ない方々も容易に「日本はおかしい」と理解できる表です。このままのやり方を良しとした場合、「日本の水産業が復活できるのか? 」という問いに対する答えはどのようなものになるのでしょうか?


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