チャイナ・ウォッチャーの視点

2014年7月9日

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城山英巳 (しろやま・ひでみ)

時事通信社外信部記者

1969年生まれ、慶應義塾大学文学部卒業後、時事通信社入社。社会部、外信部を経て2002年6月から07年10月まで中国総局(北京)特派員。 外信部を経て11年8月から2度目の北京特派員。11年、早稲田大学大学院修士課程修了。現地での中国取材は10年に及ぶ。16年5月に帰国し、現在外信部記者。近著に『中国 消し去られた記録〜北京特派員が見た大国の闇』(白水社)、著書に『中国臓器市場』(新潮社)、 『中国共産党「天皇工作」秘録』(文春新書、「第22回アジア・太平洋賞」特別賞受賞)、『中国人一億人電脳調査』(文春新書)がある。14年に戦後日中外交史スクープで13年度「ボーン・上田記念国際記者賞」を受賞。

 「死磕派」(死んでも目標を達成しようとする集団)—。中国の人権派、自由・民主派の知識人の間で、この言葉がクローズアップされている。

 学生たちの民主化要求運動を武力弾圧した天安門事件から2014年6月4日で丸25年。これに合わせ、民主派の団結を恐れる公安当局は、首都・北京をはじめ全国で、前例なき言論弾圧を展開した。特に5月3日、天安門事件の真相調査を要求する内輪の研究会が北京で開かれ、出席者のうち5人が拘束され、このうち北京市公安局は6月13日、著名人権派弁護士・浦志強氏(49)を正式逮捕した。

 共産党機関紙『人民日報』系の『環球時報』は、浦氏を代表に「“死磕派”弁護士は、自分が中国の民主・法治を建設する突破力と決定力があるとうぬぼれてはいけない」と痛烈に批判する論調を掲げた。

 浦氏は、訴訟を通じた社会制度変革を可能にする言論の自由や人権侵害などの案件を選んで弁護人や代理人に就いた。「死んでも目標を達成する」と言われる一例を挙げよう。

「拘束の機会を探していた」

 浦氏は2012〜13年に、反体制的言論を行う人物や陳情者らに対して司法手続きを経ずに最長で4年間拘束し、内外で「人権侵害の象徴」と批判された「労働教養」(労教)制度の廃止に焦点を絞った訴訟を展開した。既に解任されていた薄熙来元党委書記(無期懲役判決)体制下で言論弾圧が深刻だった重慶市で十数件を提訴。25歳の農村幹部・任建宇氏は薄熙来の政治手法を中国版ツイッター「微博」などで批判しただけで、2年間の労教処分を受けるが、浦氏は任氏の代理人を引き受け、提訴して処分の違法性を訴えた。

 内外のメディアを巻き込んで有利な世論を形成。任氏ら浦氏が代理人を務めた労教収容者は次々と釈放され、労教の問題点を浮き彫りにしていく。そして習近平指導部は13年11月、労教制度の廃止を決定。浦氏らが共産党の悪しき制度を変革させたのだった。

 天安門事件25年の節目が過ぎ、前出・研究会に参加して拘束された他の改革派知識人4人は釈放されたが、「主催者でもなく、発言もほとんどしていない」(出席者)という浦氏だけが拘束され続け、「騒動挑発」と「個人情報の不法取得」の両容疑で逮捕された。さらに注目されたのは北京市公安局がこの際、「その他の犯罪事実もさらに調査中」と発表したことだ。

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