食の安全 常識・非常識

2014年8月11日

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松永和紀 (まつなが・わき)

科学ジャーナリスト

1963年生まれ。89年、京都大学大学院農学研究科修士課程修了(農芸化学専攻)。毎日新聞社に記者として10年間勤めたのち、フリーの科学ライターに。主な著書は『踊る「食の安全」 農薬から見える日本の食卓』(家の光協会)、『食の安全と環境 「気分のエコ」にはだまされない』(日本評論社)など。『メディア・バイアス あやしい健康情報とニセ科学』(光文社新書)で科学ジャーナリスト賞2008受賞。2011年4月、科学的に適切な食情報を収集し提供する消費者団体「Food Communication Compass(略称FOOCOM=フーコム)を設立し、「FOOCOM.NET」を開設した。

 中国の食品会社「上海福喜食品」が、使用期限が切れた鶏肉や、床に落としたパテを拾って生産ラインに戻して鶏肉加工品を製造していたとされる報道を受け、同社と取引をしていた日本マクドナルド、ファミリーマートの2社は、同社の製品の販売を中止しました。

 新聞やテレビでは「氷山の一角」と報じ、これまでの中国産食品の違反問題や偽装等を改めて伝えています。偶然見たワイドショーでは、「中国は、食材を加熱して食べているため、衛生管理の意識が低い」と伝え、コメンテーターが「民度が低い」とつぶやいていました。日本のテレビは、こんな発言を許すほどになってしまったのか、と愕然。日本もつくづく民度が低くなったものだなあ、と独り言ちた私です。

ミートホープ事件との共通性

 私がこのニュースを聞いてまず思い出したのは、日本で2007年に発覚したミートホープ事件でした。品質の悪いくず肉を混ぜたり、牛ミンチと称して豚肉を混ぜたりしていました。同じです。

 「いやいや、中国は青カビが生えた肉を混ぜていたではないか! 日本のレベルじゃない」という人がいそうですが、あの告発ビデオを見た食品の専門家の多くは「青いのは、肉が冷凍焼けして酸化して色が変わっていたのでは」と見ています。

 だから許されるわけではありませんが、冷凍して水分が蒸発し、タンパク質や脂質、血液等が酸化、変成してしまう冷凍焼けは、日本でも家庭でも起きることです。床に落ちた食材を廃棄せず使う、というようなことも、日本では絶対にない、とは私は言い切れません。いえ、10年、20年前の食品工場なら、普通にあった光景だと聞きます。

 要するに、中国産もピンからキリまで。タイ産や国産だって、ピンからキリまで。十把一絡げの中国批判はナンセンスです。ところが、ミートホープ事件では、「あんなひどい工場もまだあるんだね。でも、衛生的な工場も良識ある企業人もたくさんいるわけだし」と受け止められた日本人なのに、中国になると全部一緒くたで「中国産は……」と言ってしまう。やっぱり、おかしいでしょう。

 思い込みは、冷静な目を曇らしてしまいます。週刊誌は今、すさまじい中国たたきに走っていますが、「メディアは、騒ぐと売れる」という側面を思い出すことも、消費者にとっては大事なことです。

 中国と取引している多くの日本企業は、一般市民の衛生管理意識が低く、ルール違反も引き起こしやすい中国の実情も見越して、手を打っています。そんな努力を知っている私から見れば、日本マクドナルドやファミリーマートの社長記者会見での「裏切られた」「二重帳簿が……」などの言葉は、自分達の甘さを責任転嫁しているように聞こえて、不信感につながります。

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