少年院に対する「先入観」
障害者アスリートのメッセージ

車椅子ラグビー 三阪洋行氏の講話


大元よしき (たいげん・よしき)  ライター

1962年東京生まれ。外資系IT企業からライターに転身。スポーツのほか、歴史関連も執筆中。著書に『あの負けがあってこそ』『命のバトン―自閉症児と個性派不登校児の教室』『1万回の体当たり―タックルマン石塚武生 炎のメッセージ』(以上ウェッジ)、『一緒に見上げた空』(扶桑社)。

ルポ・少年院の子どもたち

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2014年7月23日 昨年に引き続き、茨城県の初等・中等少年院『水府学院』の障害者アスリート講座で三阪洋行氏の講話が行われた。

 「昨年初めて講話のお話をいただいた時、『自分にできるのか』と不安になりました。今までいろいろな講演をしてきましたが、少年院はまったく違った環境だからです。とても言葉にしづらい先入観がありました。荒れていて規律がないのではないかとか、人の話を聴く姿勢ができていないのではないかと不安が大きくなってしまったのです」

 「また、何を話せばいいのか、そもそも自分が少年院で話す意味があるかどうかなど、いろいろ考えました。ですが、どんな子たちかわからないけれど、やってみなければ答えはわかりませんよね。だから、敢えて狙いを持たずに、怪我から現在に至るまでの自分の経験を伝えて、何かを感じてくれたら、それだけでよいのではないかと思ってお受けしました。実際に彼らに会ってみると自分が勝手に膨らませた先入観で不安になっていただけだと気付いたのです」

 三阪はラグビーの練習中の事故で頚椎を損傷した。詳しい経緯は別記事を参照されたいが、彼の感じた深い絶望、そして何度も挫折しながらも前を向いて歩んでいく姿勢は、少年たちに何を訴えたのだろうか。

7月23日水府学院にて

社会の暗部とも言える彼らの「背景」

 参加者は15歳~18歳未満の少年たち約70人。このシリーズでは何度となく書いているが、華奢な体に制服を着て、視聴覚室に集まるあどけなさを見る限り、ここが少年院であること以外は、同世代の高校生たちとなんら変わりない。むしろ見た目には幼さを感じてしまうほどだ。

 少年院に収容される彼らの背景は様々だが、家族からのネグレクトや虐待を受けたり、ひどい場合には家族に捨てられたというケースもある。このように幼い頃に被害者として過ごした経験を持つ割合が高いと聞いているが、学校の友人に何年間にも渡って陰湿ないじめを受け続けたり、教師との信頼関係が築けず学校で居場所を失うケースもある。またスポーツにおける挫折が原因となって自分を見失うこともある。

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「ルポ・少年院の子どもたち」

著者

大元よしき(たいげん・よしき)

ライター

1962年東京生まれ。外資系IT企業からライターに転身。スポーツのほか、歴史関連も執筆中。著書に『あの負けがあってこそ』『命のバトン―自閉症児と個性派不登校児の教室』『1万回の体当たり―タックルマン石塚武生 炎のメッセージ』(以上ウェッジ)、『一緒に見上げた空』(扶桑社)。

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