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2014年11月19日

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弓野正宏 (ゆみの・まさひろ)

早稲田大学現代中国研究所招聘研究員

1972年生まれ。北京大学大学院修士課程修了、中国社会科学院アメリカ研究所博士課程中退、早稲田大学大学院博士後期課程単位取得退学。早稲田大学現代中国研究所助手、同客員講師を経て同招聘研究員。専門は現代中国政治。中国の国防体制を中心とした論文あり。

 「スパイ行為」の定義として(1)スパイ組織及びその代理人によって国家の安全を脅かすような活動を行ったり、指示したり、他人に資金を提供して行わせること(2)スパイ組織に参加したり、組織や代理人から任務を請け負うこと(3)スパイ組織や代理人以外の外国の機構、組織、個人により国の秘密や情報の窃取、売買、提供や国家工作人員が謀反を起こすよう扇動したり、勧誘したり、買収すること(4)敵のために攻撃目標を指示すること(5)その他のスパイ活動を行うこと、という5つの行為を挙げた(38条)。

 次に、より具体的に法の内容はどのようなものか、二つの記事の解説を紹介したい。『法制日報』紙(11月6日)と『新京報』(8月26日)の解説記事だ。

 党中央政法委員会傘下の法制日報社が出している『法制日報』「スパイ行為を明確にすることで法に依拠する権力行使を確保―反スパイ法制定の解読」という記事によれば、「国家安全法」が採択されたのは1993年であり、それ以降、経済成長著しく、国内的にも国際的にも大きな変化が起きたために、それに相応した安全保障観を確立させ、安全保障関連の法体系を再構築することが求められていたという。

 これをもう少しわかり易くいえば、「改革開放」政策を取り入れ、1992年の鄧小平による「南巡講話」後に始まった高度成長から20年以上経った今日、これまでの成長路線が行き詰まり、各地で暴動が頻発し、政情不安が顕著になる中で政策転換が求められていたことが法改定の背景にあったようだ。中国各地では群集騒擾事件(一説には年間10万件といわれる)が頻発し、対処のために警察力が増強されたことから中国の政治体制は2000年代半ばに「維穏体制」(いわば治安維持体制とでもいうべき強権体制)と呼ばれる警察国家になったという指摘もある。

市民生活への影響は?

『法制日報』(2014年11月6日付)紙面 http://epaper.legaldaily.com.cn/fzrb/content/20141106/Page03TB.htm

 こうしてそれまでの「国家安全法」を基礎に、カウンターインテリジェンス任務遂行に必要な措置を法条項に盛り込んで格上げするよう修正された。『法制日報』紙は「反スパイ法」としての新たな内容について以下の点を挙げた。

・スパイ行為を定義し、実例を列挙
・社会全体が充分に動員され、参与できるよう適合させた
・権力の行使を規範化し、合法的権益を保障
・必要な作業における措置を法条項に格上げ

 『法制日報』紙よりもリベラルな『新京報』紙は、「スパイ行為関連の財産は差し押さえが可能に」と市民生活への影響にまで踏み込んだ解説を掲載した。同紙のポイントは次の通りだ。

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