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2014年11月19日

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弓野正宏 (ゆみの・まさひろ)

早稲田大学現代中国研究所招聘研究員

1972年生まれ。北京大学大学院修士課程修了、中国社会科学院アメリカ研究所博士課程中退、早稲田大学大学院博士後期課程単位取得退学。早稲田大学現代中国研究所助手、同客員講師を経て同招聘研究員。専門は現代中国政治。中国の国防体制を中心とした論文あり。

 中国での議会に当たる全国人民代表大会の常務委員会は11月1日の会議で「反スパイ法(中国語は「反間諜法」)」草案を採択し、同法は同日付で施行された。同法により、それまでの「国家安全法」からより具体的にスパイ活動への対処に絞りこまれたことになる。

 中国共産党の中央委員会第4回全体会議(10月20~23日開催、通常「4中全会」と略称)が「法に依拠した国の統治(依法治国)」を主なテーマに掲げていたことからいよいよ「法治」に依拠した政治改革が進むのではないかという希望的観測が出たが、「法治」の内容が明らかになるに従ってそうした見方は楽観的過ぎたことが明らかになりつつある。

全人代での審議の様子を伝えるニュース番組『広東衛衛視』
http://m.tv.sohu.com/20141102/n405690795.shtml

 「中国的法治」では、人権の保障、個人的権利の保障、言論・表現の自由といった欧米で当たり前のような内容が優先されるわけではないようである。むしろ中国で強調されるのは「法に依拠した統治強化」であり、共産党によるガバナンスであり、社会治安、安定の保障だ。こうした傾向は「4中全会」直後に採択された法律によっても裏付けられる。「反スパイ法」(国家主席令第16号)である。

 「反スパイ」というと仰々しく聞こえるが、これは通常、カウンターインテリジェンス、あるいは防諜と呼ばれている。しかし、それにしてもなぜ今頃、冷戦時代のスパイによるせめぎ合いを彷彿させる、時代がかったこうした法律が制定されなければならなかったのか。そして制定にはどのような背景があったのか。そこには、「外部勢力」に対する中国の強い警戒感と、汚職事件による機構改革の前哨戦と思われる動きがあるといえるのではなかろうか。そこでこの法律を紹介するとともに中国が重視し、警戒するスパイ活動を巡る問題の背景を考えてみたい。

「反スパイ法」とは?

 まず、中国での「反スパイ法」に関する報道を紹介する前に簡単にこの法律の構成と内容を紹介しておこう。同法は5章立てで40条からなり、中国の法律の中では比較的短い。第1章は、総則で全体像を示し、第2章で「国家安全保障機関」の「反スパイ工作」職責が示され、第3章において「公民」すなわち市民と組織の義務と権利が、第4章で法的責任が示される。第5章は付則であり、スパイ行為について定義されている。

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