テレビのニュースには拾われないかもしれないけれど、ネットの一部で盛り上がったあの話題。知りたい人へお届けします。
「お母さんがしっかりしていたら、少年は死ななかった」
当連載ではしばしば、「炎上」してしまったニュース記事やコラムを取り扱ってきた。ここで言う「炎上」とは、記事などに批判的な意見が多く寄せられることだが、多くは、ネットで書かれた記事や個人の発信が対象となったものだった。実際、出版関係者から冗談交じりに「(書籍や雑誌など)紙では、少しぐらい極端な意見を書いても炎上しないからいい」という声を聞いたこともある。しかし、今年に入って2つ続けて紙の記事から煙が上がった。
まず大きな話題となったのが、産経新聞に掲載された曽野綾子氏の連載「透明な歳月の光」。「『適度な距離』保ち受け入れを」と題し、移民受け入れについてアパルトヘイト廃止後の南アフリカ共和国を例に出しながら「人間は事業も研究も運動も何もかも一緒にやれる。しかし居住だけは別にした方がいい」と説いた。これについて差別的な内容だとしてネット上で批判が噴出。記事の掲載された2月11日が、反アパルトヘイト運動に身を投じたネルソン・マンデラ氏が釈放された日からちょうど25年(4半世紀)の節目だったこともあり、南アフリカ共和国の駐日大使や日本アフリカ学会が抗議した。
さらに先週、話題となったのが週刊文春(3月12日発売号)に掲載された林真理子氏のコラム「夜ふけのなわとび」。「お母さん、お願い」と題し、川崎市で起こった中1男子殺人事件について、被害者の母親がシングルマザーだったことなどに触れ、「お母さんがもっとしっかりしていたら、みすみす少年は死ぬことはなかったはず」などと書いた。
曽野氏のコラムは、産経新聞を読んだうちの何人かが同時多発的にツイッターなどで情報を発信し、拡散したものと思われる。これに対し、林氏のコラムは人気ライターの武田砂鉄氏が「川崎リンチ殺人、被害者の母を責めたてた林真理子氏のエッセイの暴力性」(http://bylines.news.yahoo.co.jp/takedasatetsu/20150313-00043794/)で指摘し、この記事が1万2千回以上(3月16日19時時点)リツイートされるなどネットで拡散されたことで多くの人が知るところとなった。