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2015年4月1日

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小泉悠 (こいずみ・ゆう)

財団法人未来工学研究所客員研究員

1982年生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了。民間企業を経た後、2008年から未来工学研究所。09年には外務省国際情報統括官組織で専門分析員を兼任。10年、日露青年交流センターの若手研究者等派遣フェローシップによってモスクワの世界経済・国際関係研究所(IMEMO)に留学。専門は、ロシアの軍事・安全保障政策、軍需産業政策など。著書に『ロシア軍は生まれ変われるか』(東洋書店)。ロシアの軍事情報を配信するサイト「World Security Intelligence」(http://wsintell.org/top/)を運営。

ウクライナ危機の行方

 今年2月、ベラルーシの首都ミンスクにおいてロシア、ウクライナ、ドイツ、フランスによる長時間の首脳会議が開催され、形骸化していた昨年9月のウクライナ停戦合意(ミンスク合意)の履行を促す決定が採択された。いわゆる「ミンスク2」合意である。

 同合意の直後には要衝デバリツェヴォを巡って戦闘が激化し、一時期はその履行が危ぶまれたが、ウクライナ軍が事実上、デバリツェヴォを明け渡したことで、どうにか戦闘は下火となり、部分的ながら「ミンスク2」に規定された重兵器の撤退も行われているようだ(もっとも、その実態は極めて危ういものではあるのだが)。

(画像:iStock)

 しかし、仮にこのまま「ミンスク2」による停戦が実現したとして、次の問題は「停戦」を「和平」へと発展させるプロセスである。これについて「ミンスク2」合意では、ウクライナ東部の親露派支配地域に関する特別措置法を施行した後に、「脱中央集権化」を中心とする憲法改革を実施するよう定めている。

 だが、その先行きは極めて不安定だ。「脱中央集権化」が事実上、親露派支配地域の独立国家化につながりかねないためである。

 この点を理解する上で有益なのが、前回紹介した「マロフェーエフ文書」の後半部分だ。前回は、プーチンに近い実業家マロフェーエフが、ヤヌコヴィチ政権崩壊の前からすでにその弱体化を見抜き、このままではウクライナが西側の意思に沿って分割されてしまうとの危機感の下に、ウクライナ東部をロシアに編入してしまうよう提言していたことを取り上げた。

 今回はその続きとして、マロフェーエフがいかにしてウクライナ東部をロシアに編入するよう提案したのか、その具体策に関する部分をご紹介したい、そしてここでも鍵となるのが、「住民投票」と「脱中欧集権化」なのである。

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