陸前高田の巨大ベルトコンベヤーはいったいどんな町をつくるのか。震災が一気に進めた人口流出に、市町村ごとの分散投資で抗えるか。
かの有名な「奇跡の一本松」のほど近く。岩手県陸前高田市の中心、高田地区には、全長3キロものベルトコンベヤーが空を覆うほどに張り巡らされている。
毎日ダンプ4000台分の土砂を運ぶ巨大ベルトコンベヤー。12メートルのかさ上げ造成に使われる(陸前高田市)
(TOMOHIRO OHSUMI/BLOOMBERG/GETTYIMAGES)
(TOMOHIRO OHSUMI/BLOOMBERG/GETTYIMAGES)
気仙川の向こう側に見える、海伐130メートルほどの愛宕山は、宅地などを造成する高台とすべく、8機の巨大破砕機で50メートルまで削られている。発生する大量の掘削土は、ふもとの今泉地区と川向かいの高田地区に運ばれて、最大12メートル、大半が10メートル超という膨大なかさ上げのために使われる。両地区合わせて約300ヘクタールに上る土地区画整理事業は被災地最大規模だ。
事業主体のUR都市機構によれば「ベルトコンベヤーは毎日2万立方メートル(ダンプ4000台分)の土砂を運べるので、ダンプなら10年かかる工期が4年で済む」。気仙川を跨ぐ土砂専用吊り橋は、市の公募の結果「希望のかけ橋」と名付けられたが、「神への冒涜」と評する人もいる。現地に立つと、津波に流された気仙川の三角州一帯に鳴り響く「ガンガン……」という大型重機の轟音に身震いする。
1世帯5000万円もの造成費をかけて…
人口2万4000人の陸前高田市では、震災で約1800人が犠牲になった。住宅約8200戸のうち、約4割にあたる約3400戸が被災。いまも約1600世帯が仮設住宅で暮らす。区画整理の最大の目的は住宅再建だ。
事業費はなんと約1100億円。地権者は約2200人のため、単純計算で1世帯あたり約5000万円もの造成費がかかっている。しかし、この巨額投資で生まれる町の持続可能性には疑問符がつきまとう。