WEDGE REPORT

2014年11月2日

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 福島県いわき市にある「とまとランドいわき」の巨大温室を訪れた。

 様々の大きさのトマトがずらりと並んでいる。下を見ると土はなく、かといって水耕栽培でもない。膝ほどの高さにぶら下げられた長台に、等間隔に白い袋におおわれた「スラブ」という箱が並ぶ。スラブの中には、スリランカ産というヤシの実や繊維が入っており、養液を供給する「ドリッパー」という黒いチューブが差し込まれている。箱から上に伸びるトマトのつるは水分をまとい、見るからに元気だ。

風評被害に打ち克った養液栽培のトマト

 「温室内の温度や湿度、日射量から二酸化炭素濃度まであらゆる環境の制御をコンピュータで一元管理している。トマトの生育状態にベストな気温や養分量にコントロールするため、計画的に生産することが可能」

 こう説明してくれたのは元木寛専務だ。義父が1990年にオランダから導入し改良してきた栽培システムを、10年前の結婚を機にとまとランドに入社した元木さんがブラッシュアップしている。いわき市の空間線量や土壌のセシウム濃度は決して高くない上に、地場の土を使わないこの栽培方式なら消費者の不安はないように感じるが、事故直後は大変だったと言う。

1990年に始めたオランダ式の養液栽培温室でつくるトマトは、原発事故直後の風評被害を乗り越えた(とまとランドいわきの元木寛専務)

 「風評被害で売上が1億円落ちた。事業継続は無理かなとも思ったが、修理に巨額の資金を投じた。従業員の雇用を守り切るのが大変だった」

 元木さんは持ち前の行動力で販促に努め翌年には売上を回復。「闇雲だったが動いた甲斐があった」と元木さんは笑う。昨年秋には2013年度農林水産祭にて天皇杯を受賞したほか、来春には常磐道いわき四倉インターそばにトマトの加工・販売・レストラン事業を行う施設「ワンダーファーム」をオープンする。県の地域産業6次化復興ファンドの第一号出資案件となっているほか、隣接地にはJR東日本と共同で農産物の生産・販売や観光農園を行う太陽光利用の植物工場も立ち上げる予定で、注目度は高い。

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