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2015年5月20日

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小谷哲男 (こたに・てつお)

日本国際問題研究所 主任研究員

1973年生まれ。同志社大学大学院法学研究科博士課程満期退学。ヴァンダービルト大学日米関係協力センター客員研究員、岡崎研究所特別研究員等を歴任。専門は日米同盟と海洋安全保障。法政大学非常勤講師及び平和・安全保障研究所・安全保障研究所研究委員を兼務。中公新書より海洋安全保障に関する処女作を出版準備中。

2015年4月29日、安倍首相は日本国総理大臣として54年ぶりに米国議会の壇上に立ち、演説を行った。54年前の池田勇人首相、58年前の祖父・岸信介首相などに続き史上4人目。上下両院合同会議として米国国会議員が一堂に会した場においては、史上初だった。
戦後70年であることも手伝い、演説前には、慰安婦問題に対する謝罪は入れるのかといった「歴史認識」に関する表現ばかりに注目が集まっていた。
しかし、当の安倍首相の口からは「強い日本への改革」、「戦後国際平和を米国と築いた自負と維持への決意」、「女性の人権が侵されない世の中の実現」、「積極的平和主義」、「日米同盟の堅牢さ」など、未来に向けた強い意志が伝わる文言が発せられ続けた。
演説の表面的な文言からだけでは読み取れない安倍首相が発信したかったメッセージとは果たして何だったのか。そのメッセージを米国政府、国会議員、メディア、民衆はどう受けとったのか。日本はこれからどのように振る舞っていくべきか。3人の識者に縦横無尽に論じてもらった。

 「昨日の敵は今日のトモダチ」─安倍晋三首相が米国議会上下両院合同会議での演説で米国人に送ったメッセージを一言で表すなら、こうなるであろう。

 日米は、太平洋戦争で凄惨な戦いを経験し、双方に数多くの犠牲者を出した。この演説で、安倍首相は戦争について「深い悔悟」の意を表明し、失われた米国人の魂の冥福を祈った。

 そして、硫黄島の戦いに従事したローレンス・スノーデン元海兵隊中将と、硫黄島守備隊司令官・栗林忠道大将の孫である新藤義孝国会議員の握手という「歴史の奇跡」を実現させたが、この瞬間とりわけ大きなスタンディング・オベーションがわき起こった。

 日米の和解に謝罪は必要ない。ただ、威厳を持って悲劇の歴史を共有するだけである。日米の和解を体現した安倍演説は、米国の議員に大変好意的に受け止められた。共和党の重鎮であるマケイン上院議員は、「日米の歴史の共有による和解を知らしめる歴史的な演説だった」と評価した。ベイナー下院議長も「演説は日米同盟の誇り高く歴史的な転機となった」と述べている。

 また、安倍首相は演説で先の大戦に対する「痛切な反省」に言及し、これまでの首相と同じくアジア諸国民に苦しみを与えた事実から目をそむけないと述べた。これは「村山談話」も継承することを意味している。その上で、前週にバンドン会議で行った演説でも強調したように、今後もアジアの平和と発展、繁栄のため、力を惜しまないことを誓った。

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