2024年11月22日(金)

食の安全 常識・非常識

2015年6月24日

 「米、トランス脂肪酸禁止」「トランス脂肪酸を含む食品添加物の3年以内の全廃を通達」……。こんなふうに大手メディアに報道された後、さっそくネットメディアでは「マーガリン、マヨネーズは使わない!」「ワースト5の食品は……」などの情報があふれ始めました。

 メディアは「○○は危ない」というコンテンツを流したがります。それは、やっぱりそんな情報が耳目を集めるから。ネットメディアはとりわけそう。アクセス数が稼げますもん。そんなわけで今、心配した人たちからの問い合わせや苦情が、食品企業に相次いでいるそうです。

 でも、報道には間違いが目立ちます。そもそも、トランス脂肪酸は食品添加物ではありません。それに、トランス脂肪酸対策は、単純思考ではダメ。この話、けっこう複雑です。

 私は2012年に本欄で、「科学無視のトランス脂肪酸批判 思わぬ弊害が表面化」という記事を書きました。アメリカでは“危険”でも、日本の状況は異なります。アメリカの新しい動きを踏まえて、日本のとるべき方向性を考えます。

アメリカは、部分水素添加油脂を禁止した

生成要因によるトランス脂肪酸の分類 
(出典:食品安全委員会「食品に含まれるトランス脂肪酸の食品安全健康評価」)
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 そもそも、アメリカはトランス脂肪酸を禁止したわけではありません。トランス脂肪酸は、肉や乳製品等に自然にごく微量含まれるほか、植物油を脱臭精製する際にも、わずかですが生成します。それに、植物油に水素を添加して固形や半固形の「部分水素添加油脂」(partially hydrogenated oils = PHOs、硬化油ともいう)にする工程で、多くできます。

 今回、規制が決まったのは、トランス脂肪酸の主要摂取源であるPHOsです。アメリカ食品医薬品局(FDA)が6月16日、PHOsをGRAS(generally recognized as safe:一般的に安全な物質)としては認めない、とする決定を公表しました。準備期間を経て3年後には、PHOsは禁止となります。


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