ヒットメーカーの舞台裏

2015年8月3日

»著者プロフィール
著者
閉じる

池原照雄 (いけはら・てるお)

ジャーナリスト

1950年生まれ。専門紙や全国紙の経済記者として自動車、エネルギー、金融、官庁などを担当。00年からフリーになり幅広い執筆、講演活動を展開。著書に「トヨタVSホンダ」(日刊工業新聞社)、「図解雑学 自動車業界のしくみ」(ナツメ社)など。

 思わず「何これ?」と言ってしまいそうなデザインだが、室内の空気を撹拌するサーキュレーターの機能も備えた扇風機だ。保守的なイメージの強いパナソニックの製品ということも意表を突く。月産計画は2000台。5月に発売したが、約1カ月の出荷は計画比3倍ペースとなっている。

ファン内蔵型なので子どもが指を巻き込む心配もない

 本体部分の直径は25センチで、サッカーボールよりやや大きい。直径11・5センチの吹出口の周囲には6個の円形吸気口が設置されている。本体内のファンで起こした風が吹出口から出る際、吸気口からも風が巻き込まれて加わる「誘引気流」という機構を編み出した。

 最大で、ファンが吸引する風量の約7倍の風を送り出すことができ、サーキュレーターとしては直線的で強力な送風機能をもつ。風向きは真下以外、ほぼ自在にできる。扇風機モードではファンのモーターの回転数を細かく制御することで避暑地の高原を流れるような自然界の風を再現したという。このため、商品名には「創風機」という造語を冠した。実勢価格は税抜きで4万円前後と高めだが、国内生産で塗装などの質感も良い。

 商品化を担当したのは、グループで空気清浄機や送風機器などを手掛けるパナソニックエコシステムズ。同社の研究開発部門の若手技術者グループが企画した。メンバーのひとりであるR&D本部の送風チーム・ユニットリーダー、小田一平(33歳)によると、20~30代によるグループは「送風など会社の技術を生かして新しいことをやろうと、8人が自然発生的に集まった」という。2011年秋のことであり、翌年初めにはいくつかの製品を社内提案した。

 「Q」のプロトタイプもそのひとつで、当時の写真を見ると、外観はほぼ最終商品の出来映えだ。ただ、余りにもとがった製品だけに小田は「敬遠されるだろうけど、ダメ元だ」と思っていた。しかし、事業化を担当する室内空調機器部門のトップからは「面白い。やってみなさい」と賛同をもらったのだった。グループには喜びの輪が広がったが、手本のない商品だけに幾つものハードルが待ち構えていた。

関連記事

  • PR
  • 新着記事

    »もっと見る