オトナの教養 週末の一冊

2015年9月3日

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本多カツヒロ (ほんだ・かつひろ)

ライター

1977年横浜生まれ。2009年よりフリーランスライターとして活動。政治、経済から社会問題まで幅広くカバーし、主に研究者や学者などのインタビュー記事を執筆。現在、日刊サイゾーなどに執筆中。ブログ:http://golazo-sala.cocolog-nifty.com/pinga/

ーーその理由には、どんなことが考えられるでしょうか?

牧野:自己啓発書の、自分自身と向き合えば結果を出すことができるというメッセージが、競技への向き合い方と似ているところがあるからかもしれません。スポーツに範をとったメンタルトレーニングは自己啓発書でも多く扱われますし、スポーツ選手による自己啓発書(のようなもの)も最近は多いですよね。仕事とスポーツが近い感覚で捉えられるようになっているのかもしれません。まあそうなると、アスリートのように自分自身のメンタルに向き合わねばならない今日の労働ってなんなんだ、という話になるんですが。

ーーそのような観点から、この世の中では、自分自身とその心にどう向き合うべきとされているのかを考察したのが、前著『自己啓発の時代』(勁草書房)であったわけですね。では、前著を書き終えて、その続編となる本書を書くことになった経緯や動機はどういったものだったのでしょうか?

牧野:ご紹介いただいた『自己啓発の時代』では、戦後の自己啓発書ベストセラーや就職対策書、ライフスタイル誌などを資料にして、自己啓発的なメッセージを掲げるメディアは一体どのような自己であることを読者に求めるのかについて分析しました。その後、本書の元となったプレジデントオンライン「ポスト『ゼロ年代』の自己啓発書と社会」という連載を始めることになったのですが、ここでは、自己啓発書というメッセージの凝縮体のなかにある、自己に限らないさまざまな価値観を分析してみようということで、自己啓発書から考える現代社会というテーマで一年間あれこれ書いてみました。

 また、前著では自己啓発書というテクストを質的に分析するということは行ったのですが、それらをどんな人が読み、どんな人達がつくっているのかについての考察が足りていませんでした。そこで先の青少年研究会調査の分析、さらには自己啓発書の編集者と読者(それと2人だけですが著者)のインタビュー調査を行い、さらに連載で扱った資料のなかからもう少し掘り下げられそうだと思った資料をとりあげて、それらを後述する観点からまとめて論じ、自分なりにできることをすべてやってしまおうとしたのが今回の本です。

ーー自己啓発書のなかにある価値観とは具体的にどういったものでしょうか?

牧野:たとえば男性向けの自己啓発書では、「20代は友だちなんかと遊ばずとにかく仕事に没頭しろ」とか、「上司の言っていることがおかしいと思ってもまずはやってみろ」とか、いかにも日本的、いかにも男性的だなあと思うメッセージがあって、言葉だけみると今更そんなこと言わないでしょうと思うかもしれませんが、かなり多くの本に書いてあります。あるいは逆に、書かれていないこと、たとえば家事や育児のことを書いてある自己啓発書は少ないのですが、それってつまり、男性は家事・育児をしなくていいという価値観が暗に示されているのだと思うんです。

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