対談

2015年9月28日

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いまこそ知られるべき二宮金次郎の先見性

木下 キャリアの最初期に何を体験するかは大きいですよね。最初に入った地域が「もらったもん勝ち」の世界だったら、自力でお客様に価値を提供して稼ごうと思う人はそれができる場所へ出て行くことになるし、地域に残る人は予算依存型の人ばかりになってしまう。

久松 「お金をあげればうまくいく」に少しでもロジックがあるのならまだマシだけど、お金をあげた結果すら調査していないことがほとんどですからね。
いま、就農すると「青年就農給付金」が5年間、年に150万円もらえるんですよ。そもそも多業種ではそんな仕組みがなくて起業できない人がいくらでもいるから不公平だと思うし、しかもこの制度では前年の給付金抜きの所得が250万円を超えると給付停止になるから、わざと売上を調整して250万円未満にしようとするバカも出てくるんですよ。配偶者特別控除の「103万円の壁」みたいなバカげた話で、そんなはした金で自分の仕事をねじ曲げる奴は仕事を変えたほうがいい。

木下 結局そうなっちゃうんですよね。それで思い出すのは二宮金次郎(二宮尊徳)なんです。二宮は仕えていた小田原藩主から農村再生を命じられて、引き受ける条件として、その地域への支援、今でいう補助金を止めることを提示したんです。貧しいからといって補助金を出すだけでは、地元で役人と農民がつるんでお金を取り合うようになるだけで、本業の農業に力がまったく入らない。だから補助金ではなく、生産量に応じて税金の算定を変えたり、新規の開墾を推奨することなどを推し進めるんです。二宮の農村再生のことを書いた『報徳記』などを最近読んでいて、久松さんのお話を聞いて思い出しました。

久松 やっぱり凄いね、二宮金次郎は。合理的ですよね。

木下 彼の作った「報徳仕法」という手法は本当に巧みで、凄いなと思います。報徳仕法は、まず現地をしっかりと調査した上で、それぞれに相応しい支出限度である「分度」に定めます。地域における収支均衡、均衡予算の考え方ですね。

 分度の枠内で生活して出た余剰は、飢饉などに備えて貯えさせる。これだけだと単なる緊縮財政なのですが、二宮はさらに地域内で生まれた余剰の一部を「推譲」として皆に拠出させて、これを原資に地域金融の仕組みを動かすんです。貧しい人には無利子で、それなりに豊かな人には一定の金利で融資する。農道整備など社会資本の整備には長期低金利で融資する、といった方法で再生を図りました。

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