石油を読む

2015年12月12日

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 石油がさらに価格を下げた、なぜか? そんな誰にでも書ける話題は「わたしは書かない」と言いたいところだが、そうもいかないので前回の記事(「石油価格の決まり方」)を参照しながらわたしの見方を書き留めておきます。

 価格レベルの形成に影響を与える情報は、4つの、異なった性質を持つ群に分けられます。 

 第1群は、井戸元での生産コスト情報など、生産者側および最終需要者側の経済合理性に根を張った情報のこと。

 第2群は、国際石油需給見通し情報で、この種の情報に基づいてなされる取引を、現物取引と言う。

 第3群は、石油の先物市場において買い圧力が優勢か、それとも売り圧力が優勢か、を教える情報。

 第4群は、石油の世界に影響力ある有力ソースから発信される将来価格見通しで、「ナビ情報」と呼んでみる。

 わたしは、現今の価格水準は、北米のシェールオイルの井戸元生産コストにかかわる情報と、石油先物取引市場で投機筋が、ごく短期的に、大規模な売りポジションに転じている事情、すなわち第1群情報と第3群情報によって形成されている、と観察している。

 北米シェール原油生産企業の経営は、思いがけない耐性を示している。技術的にも、ビジネスモデル面でも、イノベイションがどんどん現れて、それがすぐに産業全体に伝播してゆく。だから価格レベルの下げ幅に耐えている。さすがアメリカである。このお話は、別途きちんと書きます。

 短期的には、12月に入って投機マネーが自らのポジション取りで相場にボラティリティを作り出し、機敏な鞘取りを試みようとしている。彼らは当面、価格の引き下げに熱心である。トレイダーたちはもはやクリスマスで、ドタバタ働かされるのはお互いにメイワク。だから、今年はここでおしまい。今後、近いうちにシェール原油の開発生産活動に不調の兆候が現れる。投機マネーは、ここで買いに転ずるだろう。
 

 さて、今回の本題は、第2群情報すなわち国際石油需給見通し情報に基づいてなされる原油の現物取引についての話をします。

「相場」と「価格」とは別物

 今回は、「相場」と「価格」とは別物なのだ、とはじめよう。つまり、石油の価格は、売り手と買い手が交渉し、価格条件が折り合い、成約して決まる。日々、世界中でいくつものディールができるのだが、成約情報が報道されるのはそのうちの一部です。トレイダーたちは「何日か噂が出ていたヨーロッパ系のトレイダーの売りが、アジアとの間で成約したみたいだ。50ドル。今、トレイディングボード画面に出た。プロンプトカーゴだ。どうやらこのあたりが現物相場かな」とか、仲間内でおしゃべりを始めるのだ。

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