坂本幸雄の漂流ものづくり大国の治し方

2016年8月10日

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坂本幸雄 (さかもと・ゆきお)

サイノキングテクノロジーCEO、元エルピーダメモリ社長

日本体育大学卒業後、日本テキサス・インスツルメンツに入社し、93年副社長。神戸製鋼所、日本ファウンドリー社長を経て、02年エルピーダメモリ社長。現在サイノキングテクノロジーCEO。

 昨年、トヨタ自動車の女性外国人役員が逮捕されたという報道が世間を賑わせた。武田薬品工業の外国人CFOが6月に電撃退任し、スイスのネスレへ転職したという一件もあったが、昨今日本企業ではグローバル化に伴い、役員のみならず外国人社員を雇用する機会が増えている。

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 だが、トヨタや武田薬品に限らず、外国人社員の扱いに手を焼く日本企業は多い。外国人が日本企業の文化・風習にあわせて働くというのは、土台無理な話だ。私もエルピーダメモリの社長時代、外国人社員の採用もしたし、多くの外国人と接して失敗もしてきた。そうした経験から言えることは、「外国人は疎外感を覚えているケースが非常に多い」ということだ。

 意外とも思えるところで疎外感を覚えていることもある。例えば、ある日、私は外国人社員から「エルピーダはグローバル企業ですか?」と唐突に質問をされた。「もちろんそうだ」と答えたが、「ではなぜ週報が日本語で書かれているのですか? これを私たちに読めと言うのですか」と言われた。私は謝罪し、すぐさま英語に変更した。

 私自身、外資系のテキサス・インスツルメンツで働いており、本社のあるアメリカでは外国人社員として勤務した経験をもつ。その際、同僚たちは、コロラド川のカヌー下りやベースボール観戦、ゴルフやホームパーティーにも誘ってくれた。土日のほうがむしろ忙しかったかもしれない。

 振り返ってみれば、こうした活動が、私の疎外感を紛らわせ、仕事のしやすい環境をつくってくれていた。ドライなイメージのあるアメリカ企業だが、日本企業よりも実は温かい、と思うケースはよくあり、これもその一例だ。

 こうした経験をもとに、エルピーダメモリ時代には、外国人社員を飲み会や夕食会、ゴルフに誘うなどした。社員が相互理解を深めるための一泊二日の研修会等も行った。会議でも発言しやすいように、意識的に外国人社員に質問を投げかけ、他の役員にも質問させるなどの工夫を凝らした。

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 もちろん最終的には、仕事は自分でやるものだが、やはり仲間とワイワイガヤガヤやりながら、成功していくことが一番楽しい。チーム制で業績を競い、優れた結果を残したチームには賞金を与えるなどの仕掛けもつくったが、外国人社員も楽しんでやってくれていた。

 外国人社員にはクリアな将来をみせることも大切だ。明確な目標を与えて、それを達成すれば臨時ボーナスがでるシステムなどについて、しっかり説明する必要がある。詳細はわからないが、武田薬品は退職したCFOに対して、こうしたクリアな将来をみせることができていなかったのではないか。

 「日本企業の常識は世界の非常識」であることを自覚し、外国人社員がより活躍できる土壌を整えなければ、いつまで経っても真のグローバル化は叶わないだろう。

  
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