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2016年1月26日

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今年の米アカデミー賞の俳優候補たちが昨年に続き全員白人だったことを発端に、米映画芸術科学アカデミーは会員が白人男性に偏っているのを是正するため、白人以外の会員や女性の会員を倍増させる方針を表明した。ハリウッドでは多くの映画関係者がこれを歓迎している。

米映画芸術科学アカデミーのシェリル・ブーン・アイザックス会長は22日、「アカデミーは映画業界が追いつくのを待つのではなく、率先していきます」と文書で多様性拡大の方針を発表。アカデミー理事会の人数を3人増やし、多様性を拡大すると共に、過去10年にわたり映画業界で実質的に活動していない会員の投票権を取り上げる。

「(アカデミーの)運営と投票に関する新施策はただちに効果を発揮し、会員構成を大々的に変えていくプロセスがこれで始まることになる」とアカデミーは声明で説明している。

2年連続して俳優候補が全員白人だったことに抗議し、授賞式のボイコットを表明していたスパイク・リー監督はこの決定を受けて「第一歩だ」とコメント。「アカデミーの対応を評価する」と述べたが、2月28日の授賞式は欠席すると述べた。

ユタ州で開催中のサンダンス映画祭に出席していた俳優ドン・チードルさんは、今年の授賞式に影を落とそうとしていた問題についてアカデミーが対応する姿勢を見せたのは評価できると述べた上で、映画の作り手は「語りたい物語を語れる機会が必要だ。だから一番大事なのは金属の塊ではなくて、大事な物語についてゴーサインを出すべき立場にいる人たちが、ちゃんとそうするかどうかだ」と述べ、オスカー像の行方よりもどういう映画が製作されるかのほうが重要だと釘を刺した。

公民権活動家マーティン・ルーサー・キング牧師を描いた映画「セルマ」を撮ったエイバ・デュバーネイ監督はツイッターで、「恥ずかしいという感覚がえらい動機になったものだ」と書いた。デュバーネイ監督が昨年のアカデミー賞で監督賞候補にならなかったことも、当時議論を呼んだ。

「隅に追いやられてきた芸術家たちはもう何十年も前から、アカデミーには改革が必要だと主張してきた」ものの、「(アカデミーは)耳を貸さず、心を閉ざしてきた」と監督は批判した上で、今回の措置は「有色人種と女性の芸術家が歩いてきた長く入り組んだ旅路における、良い一歩だ」と評価した。

映画「The Martian」(邦題「オデッセイ」)で主演男優賞候補になったマット・デイモンさんは、アカデミーの措置は「素晴らしい第一歩」だが、社会をより正確に反映するには「もっともっともっといろいろ」やらなくてはならないと苦言した。

今年の授賞式の司会は昨年から、コメディアン、クリス・ロックさんに決まっていた。人種差別批判を受けてロックに出演キャンセルを呼びかける声もあったが、プロデューサーのレジナルド・ハドリンさんは、司会者に変更はないと明らかにした。

ハドリンさんによると、ロックさんは「いささかピリピリした事態になった」のを反映したトークを披露するため、授賞式の台本を鋭意書き換えている最中だと言う。

ハドリンさん自身は2012年にクエンティン・タランティーノ監督の「ジャンゴ 繋がれざる者」のプロデューサーとして候補になった。クリス・ロックさんの授賞式トークは「みんなの話題をさらう内容になるはずだ」と期待を持たせた。

アカデミーに対する人種差別批判を受けて、複数の俳優がこれまでに意見を表明してきた。

ダスティン・ホフマンさんは、ハリウッドに「潜在的な人種差別がある」と述べ、黒人俳優が候補にならないのはアメリカ社会の問題を反映していると指摘した。

ジョージ・クルーニーさんは、白人俳優しか候補に選ばなかったアカデミーは「間違った方向に進んでいる」と批判。「10年前のアカデミーの方がちゃんとしていた。もっとちゃんとやらないとだめだ。しかもこれはアフリカ系アメリカ人の話で、ヒスパニックとなるともっとひどい」と改善の必要性を強調した。

ルピタ・ニョンゴさんも、候補者が多様性を「取り入れていないのは残念」とインスタグラムに投稿し、「変化を求める」人たちに賛同を表明。アカデミー賞は「今の時代に私たちの芸術が提示できる最高のものを、多様に反映するべき」と書いた。

バイオラ・デイビスさんも、「オスカーのことはもっと大きい問題の症状に過ぎない。それはハリウッドの映画作りの仕組みの問題だ。才能ある人の数と機会の数がマッチしていない。もっと機会が必要だ。もっと機会に投資しないと」と、より多様な映画作りの必要性を訴えた。

ジョーン・コリンズさんは、スパイク・リー監督がアカデミー賞を「百合のように白い」(白人至上主義の意味)と呼んだことにツイッターで不快感を示し、「私はオスカー会員で、(黒人俳優)イドリス・エルバに投票した。だからアカデミー会員は百合のように白いと言われるのは不快だ」と書いた。

一方で、サー・マイケル・ケインは「もっと我慢が必要だ」と述べた。「黒人俳優は大勢いる。黒人だからってその俳優に投票するわけにはいかない。『上手じゃないけど黒人だから彼に投票する』とは言えない。いい演技をしなきゃならないし、いい演技をした人は大勢いるんだろう。必ず評価されるから。僕だってオスカーをもらうまでに何年もかかった。何年もかかったんだ」とBBCラジオに話した。

シャーロット・ランプリングさんは、白人しか候補にならなかったのを批判するのは「白人差別ではないか」、「候補にふさわしい黒人俳優がいなかったからかもしれないのに」とフランスのラジオに語り、物議をかもした。

他方で、故ネルソン・マンデラ元南アフリカ大統領の娘マキさんは、アカデミー賞候補をめぐる抗議は「とても重要」だと評価。BBCラジオに対して「問題が起きているのが世界のどこだろうと、抑圧された人の戦いは、世界中の抑圧された人の戦いだ」、「自分の裏庭のことにしか関心ないとは言えない」と共感を示した。

(英語記事 Academy diversity pledges welcomed by Hollywood)

提供元:http://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-35407129

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