トランプ、サンダースは勝てるか?
米大統領選、第2ラウンドを予想する


海野素央 (うんの・もとお)  明治大学教授、心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08~10年、12~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年及び12年の米大統領選挙においてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。著書に「オバマ再選の内幕―オバマ陣営を支えた日本人が語る選挙戦略」(同友館)など多数。

海野素央のアイ・ラブ・USA

コミュニケーションの専門家が、大統領選挙活動を中心にアメリカの動向を報告するほか、インターナショナルな場面でのコミュニケーションのあり方を説く。

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トランプ旋風が巻き起こる中でスタートしたアメリカ大統領選。候補者指名争いにおける第一戦となったアイオワ州。民主党はヒラリー・クリントン候補が49.8%で、バーニー・サンダース候補49.6%に辛勝。共和党では、世論調査での支持率に反して、テッド・クルーズ候補27.7%が、ドナルド・トランプ候補24.3%を破って1位となった。

サンダース陣営とクリントン陣営が標的としている有権者の家の玄関(筆者撮影@ニューハンプシャー州コンコード)

 そうした中、日本を代表するアメリカ大統領選ウォッチャーである海野素央・明治大学教授が急遽、第2戦の地であるニューハンプシャー州の州都コンコードに飛んだ。クリントン陣営のボランティアとして84軒の戸別訪問を終え、現地宿泊先の「Holiday Inn」に戻った海野教授に電話インタビューを行った。

編集部(以下、——) 一部報道によれば、クリントン陣営は、劣勢が予想されるニューハンプシャーは捨てたと言われていますが、いかがでしょうか?

海野 それは大きな間違いです。30ポイントあった支持率の差を、僅差にしようとしています。戸別訪問では、「何時に投票に行く」といった形で、投票日の行動計画を作ってもらうように努力をしています。口約束に終わってしまうかもしれませんが、「一度約束してしまった」という心理的な効果は意外と大きいのです。

アイオワ党員集会の前に選対を訪問したクリントン候補と筆者(@アイオワ州デモインクリントン選対)

 クリントン陣営では今、4つの「説得のメッセージ」を強く打ち出しています。

 1. 家族、中間層を大切にする

 2. 富裕層だけではなく、多くの人に恩恵が行き渡るようにする

 3. トランプ候補とクルーズ候補に勝てるのは、クリントンだ

 4. 大統領になった初日から、仕事をすることができる(それだけの経験値がある)

クリントン候補の差し入れ。同候補は「不健康なドーナツを持って来ました」と言って、スタッフとボランティアの草の根運動員を笑わせた(筆者撮影@アイオワ州デモインクリントン選対)

 報道ではサンダース議員が優勢と伝えられていますが、コンコードの地元紙がクリントン候補を支持する社説を出しました(編集部注:アメリカの新聞は、大統領選において民主、共和両党の候補者の中から、支持者を発表することが一般的)。戸別訪問では、この社説のコピーを配るようにしています。地元紙がクリントン候補を支持したのも、これまでの「経験値」を一番にあげていました。

—— それにしても、サンダース候補の追い上げも凄まじいものがあります。

選対を訪問したガブリエル・ギフォーズ元下院議員(民主党・アリゾナ州)と夫の宇宙飛行士マーク・ケリー氏。2011年1月アリゾナ州トゥーソンで同議員は頭部を銃撃された。「ヒラリーは銃規制に反対するロビイストと戦っています」と語って、クリントン支持を訴えた。クリントン候補は、銃規制に消極的なサンダース上院議員(無所属・バーモント州)を批判している(筆者撮影@ニューハンプシャー州コンコードクリントン選対)

海野 アメリカの若者は基本的にリベラルです。29歳以下の支持率はサンダース候補が84%であるのに対して、ヒラリー候補は14%しかありません。若者がクリントン候補を支持しない理由は明確です。

 1. エスタブリッシュメント

 2. インサイダー

 3. 職業政治家

 4. エキサイティングでない

 この4点です。さらに、イラク戦争に賛成したこと(現在ではその選択が間違いであったことを認めている)、TPPに賛成(現在は反対に回った)。以前のレポートでも紹介した通り、クリントン候補のプラグマティックな面が、一貫性のあるサンダース候補を支持している有権者に、不信感を生んでいるのです。

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著者

海野素央(うんの・もとお)

明治大学教授、心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08~10年、12~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年及び12年の米大統領選挙においてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。著書に「オバマ再選の内幕―オバマ陣営を支えた日本人が語る選挙戦略」(同友館)など多数。

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