トランプ旋風が巻き起こる中でスタートしたアメリカ大統領選。候補者指名争いにおける第一戦となったアイオワ州。民主党はヒラリー・クリントン候補が49.8%で、バーニー・サンダース候補49.6%に辛勝。共和党では、世論調査での支持率に反して、テッド・クルーズ候補27.7%が、ドナルド・トランプ候補24.3%を破って1位となった。
そうした中、日本を代表するアメリカ大統領選ウォッチャーである海野素央・明治大学教授が急遽、第2戦の地であるニューハンプシャー州の州都コンコードに飛んだ。クリントン陣営のボランティアとして84軒の戸別訪問を終え、現地宿泊先の「Holiday Inn」に戻った海野教授に電話インタビューを行った。
編集部(以下、——) 一部報道によれば、クリントン陣営は、劣勢が予想されるニューハンプシャーは捨てたと言われていますが、いかがでしょうか?
海野 それは大きな間違いです。30ポイントあった支持率の差を、僅差にしようとしています。戸別訪問では、「何時に投票に行く」といった形で、投票日の行動計画を作ってもらうように努力をしています。口約束に終わってしまうかもしれませんが、「一度約束してしまった」という心理的な効果は意外と大きいのです。
クリントン陣営では今、4つの「説得のメッセージ」を強く打ち出しています。
1. 家族、中間層を大切にする
2. 富裕層だけではなく、多くの人に恩恵が行き渡るようにする
3. トランプ候補とクルーズ候補に勝てるのは、クリントンだ
4. 大統領になった初日から、仕事をすることができる(それだけの経験値がある)
報道ではサンダース議員が優勢と伝えられていますが、コンコードの地元紙がクリントン候補を支持する社説を出しました(編集部注:アメリカの新聞は、大統領選において民主、共和両党の候補者の中から、支持者を発表することが一般的)。戸別訪問では、この社説のコピーを配るようにしています。地元紙がクリントン候補を支持したのも、これまでの「経験値」を一番にあげていました。
—— それにしても、サンダース候補の追い上げも凄まじいものがあります。
海野 アメリカの若者は基本的にリベラルです。29歳以下の支持率はサンダース候補が84%であるのに対して、ヒラリー候補は14%しかありません。若者がクリントン候補を支持しない理由は明確です。
1. エスタブリッシュメント
2. インサイダー
3. 職業政治家
4. エキサイティングでない
この4点です。さらに、イラク戦争に賛成したこと(現在ではその選択が間違いであったことを認めている)、TPPに賛成(現在は反対に回った)。以前のレポートでも紹介した通り、クリントン候補のプラグマティックな面が、一貫性のあるサンダース候補を支持している有権者に、不信感を生んでいるのです。