2024年12月22日(日)

海野素央のアイ・ラブ・USA

2016年2月8日

 トランプ旋風が巻き起こる中でスタートしたアメリカ大統領選。候補者指名争いにおける第一戦となったアイオワ州。民主党はヒラリー・クリントン候補が49.8%で、バーニー・サンダース候補49.6%に辛勝。共和党では、世論調査での支持率に反して、テッド・クルーズ候補27.7%が、ドナルド・トランプ候補24.3%を破って1位となった。

サンダース陣営とクリントン陣営が標的としている有権者の家の玄関(筆者撮影@ニューハンプシャー州コンコード)

 そうした中、日本を代表するアメリカ大統領選ウォッチャーである海野素央・明治大学教授が急遽、第2戦の地であるニューハンプシャー州の州都コンコードに飛んだ。クリントン陣営のボランティアとして84軒の戸別訪問を終え、現地宿泊先の「Holiday Inn」に戻った海野教授に電話インタビューを行った。

編集部(以下、——) 一部報道によれば、クリントン陣営は、劣勢が予想されるニューハンプシャーは捨てたと言われていますが、いかがでしょうか?

海野 それは大きな間違いです。30ポイントあった支持率の差を、僅差にしようとしています。戸別訪問では、「何時に投票に行く」といった形で、投票日の行動計画を作ってもらうように努力をしています。口約束に終わってしまうかもしれませんが、「一度約束してしまった」という心理的な効果は意外と大きいのです。

アイオワ党員集会の前に選対を訪問したクリントン候補と筆者(@アイオワ州デモインクリントン選対)

 クリントン陣営では今、4つの「説得のメッセージ」を強く打ち出しています。

 1. 家族、中間層を大切にする

 2. 富裕層だけではなく、多くの人に恩恵が行き渡るようにする

 3. トランプ候補とクルーズ候補に勝てるのは、クリントンだ

 4. 大統領になった初日から、仕事をすることができる(それだけの経験値がある)

クリントン候補の差し入れ。同候補は「不健康なドーナツを持って来ました」と言って、スタッフとボランティアの草の根運動員を笑わせた(筆者撮影@アイオワ州デモインクリントン選対)

 報道ではサンダース議員が優勢と伝えられていますが、コンコードの地元紙がクリントン候補を支持する社説を出しました(編集部注:アメリカの新聞は、大統領選において民主、共和両党の候補者の中から、支持者を発表することが一般的)。戸別訪問では、この社説のコピーを配るようにしています。地元紙がクリントン候補を支持したのも、これまでの「経験値」を一番にあげていました。

—— それにしても、サンダース候補の追い上げも凄まじいものがあります。

選対を訪問したガブリエル・ギフォーズ元下院議員(民主党・アリゾナ州)と夫の宇宙飛行士マーク・ケリー氏。2011年1月アリゾナ州トゥーソンで同議員は頭部を銃撃された。「ヒラリーは銃規制に反対するロビイストと戦っています」と語って、クリントン支持を訴えた。クリントン候補は、銃規制に消極的なサンダース上院議員(無所属・バーモント州)を批判している(筆者撮影@ニューハンプシャー州コンコードクリントン選対)

海野 アメリカの若者は基本的にリベラルです。29歳以下の支持率はサンダース候補が84%であるのに対して、ヒラリー候補は14%しかありません。若者がクリントン候補を支持しない理由は明確です。

 1. エスタブリッシュメント

 2. インサイダー

 3. 職業政治家

 4. エキサイティングでない

 この4点です。さらに、イラク戦争に賛成したこと(現在ではその選択が間違いであったことを認めている)、TPPに賛成(現在は反対に回った)。以前のレポートでも紹介した通り、クリントン候補のプラグマティックな面が、一貫性のあるサンダース候補を支持している有権者に、不信感を生んでいるのです。


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