世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

ミサイル配備問題で広がる波紋 米中韓の決着はつくのか?

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世界の流れは、時々刻々専門家によって分析考察されています。それらを紹介し、もう一度岡崎研究所の目、日本の目で分析考察するコラム。

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 THAADによる偵察情報が米大陸の弾道ミサイル防衛システムに組み込まれるとの中国の懸念は正しい。しかし、米国は既に確立した防衛システムを持っている。韓国配備は中国に対する米国の早期追跡能力を改善することはあろうが、実際のミサイル阻止を大きく改善するという訳ではない。大陸間弾道弾は高速度で飛行するし、高度な侵入能力を装備している。

 AN/TPY-2レーダーの配備は韓国にとりメリットがある。全体としてみればTHAAD配備は韓国にとってプラスである。金正恩が核やミサイルの開発に依存すればするほど、THAADの配備には説得力が増す。

出 典:Rod Lyon‘The Hard Truth About THAAD, South Korea and China’(National Interest, February, 23, 2016)
http://www.nationalinterest.org/blog/the-buzz/the-hard-truth-about-thaad-south-korea-china-15295

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 この記事は、THAADは北朝鮮からの短距離ミサイル迎撃にも有効であり、また中国の懸念に対しては米国の現在の偵察能力を大きく改善させるものではないと主張します。THAADの韓国への配備は、韓国にとってプラスであると結論づけています。

 米国によるTHAADの韓国への配備構想は、ここ数年韓国で大きな問題となってきました。中国は強く反対し、韓国政府は対中緊密外交政策もあり、米中の間で逡巡し決定を引き延ばしてきました。2014年7月に訪韓した習近平は配備をしないよう朴槿恵に直接協力を要請したといわれています。しかし、北朝鮮による1月の核実験と2月のミサイル発射等で韓国は考えを大きく変えました。2月16日の国会演説で朴槿恵はTHAAD配備に決意を示しました。

THAAD巡り事態はさらに複雑化

 THAADの韓国への配備は、北朝鮮の情勢等アジアの厳しい状況を考えれば、粛々と進めるべきものです。それは、韓国の対北朝鮮抑止力にもなりますし、米韓同盟の強化にもつながります。中国が懸念を持っていることは理解できますが、THAADは実体的に「防御的な」ものであり、弾道ミサイルのような「攻撃的な」兵器ではありません。また、アジア太平洋の軍事均衡を大きく変えて不安定化させるものでもありません。

 中国は対韓牽制を続けています。韓国では、中国大使が2月23日にこの問題で中韓関係は壊れると発言したことが大きな反響を引き起こし、メディアが社説で批判し、外交部が大使を呼び抗議するなど大騒ぎになっています。

 事態はさらに複雑化しています。2月23日に予定されていた米韓THAAD協議合意の発表が米国の要請で急遽延期されました。その背景には、23日のワシントンでのケリー国務長官・王毅外相会談があるようです。この会談で、米中は、国連安保理で北朝鮮に対する厳しい制裁を行うことで合意するとともに、北朝鮮との対話を再開することでも一致しました。THAAD配備問題が米中の議論の対象になり、中国の賛同を必要とする国連安保理での北朝鮮制裁問題にもリンクされたようです。

  
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