豪州戦略政策研究所のライオンが、THAADは短距離ミサイルにも有効であり韓国にはプラスである、米国は既にグアムなどでの配備によって偵察能力を確立し、韓国配備はそれを大きく改善するものではないと2月23日付National Interestのサイトで主張しています。主要点は次の通りです。
韓国などで配備されているパトリオットミサイル(iStock)
THAAD配備問題における二つの誤解
韓国は、北朝鮮による核実験とミサイル発射を受け、THAADミサイル防衛システムの配備について立場を変え、米国と協議している。これに対し、中国は強く反対している。
議論には二つの誤解がある。第一は、THAADは中距離ミサイルの阻止に最も適していて、短距離ミサイルの阻止には役に立たないという主張である。第二は、THAADは韓国のためというよりも米国の対中軍事優位の強化に資するものだとの主張である。
THAADの能力については、飛行試験結果等が短距離ミサイル阻止能力を持っていることを示している。移動式レーダーAN/TPY-2は短距離ミサイルの全航程を補足することができる。韓国はパトリオット2からパトリオット3への更新によりミサイル防衛能力を改善する。しかしパトリオットはポイント・ディフェンス・システムであり、THAADはミサイル防衛を多層化するものである。迎撃ミサイルの数は限られており、状況によってはこれらの二つのシステムでも十分でない事態は容易に起こりうる。
中国の懸念は、米国に向けた中国の戦略ミサイルが阻止されることにあるのではなく、韓国配備が米の弾道ミサイル防衛システムの対中早期警戒機能を高めること、即ち中国の対米能力が低減されることにある。