チャイナ・ウォッチャーの視点

2016年5月16日

»著者プロフィール
閉じる

高田勝巳 (たかだ・かつみ)

株式会社アクアビジネスコンサルティング代表

株式会社アクアビジネスコンサルティング 代表取締役。拓殖大学で中国語を専攻し、1984年より1986年まで中国の遼寧大学、北京大学での留学を経て、1987年に当時の三菱銀行に入行。1993年より同行上海支店開設のために上海に赴任。1998年に同行を退職後、上海で独立し、それ以来上海を拠点としたコンサルタントとして活躍。2002年より現職。この間、多くの日中間のビジネスにコンサルタントとして関与、最近は日系企業の顧客以外にも中国企業の対日投資並びに技術導入も支援している。中国の第一財経テレビ、香港のフェニックステレビの時事討論番組のコメンテーターとしても活躍している。

 H&MもA社に負けないくらいの交渉があるが、その仕方がスマートで受ける側の気持ちが全く違う。それはトラブル処理と同じくあくまでも合理的で理詰めの交渉。これは話を聞いた上での筆者の印象であるが、H&Mは高いブランドイメージ、価値の維持に成功しているのでおそらく製品の付加価値がA社よりも高く、その分合理的な範囲でコスト削減を求めて行けばそれで十分利益が取れる好循環にあるのではと感じた。

 最後にA社を含めた日系アパレルメーカーは、H&Mを超えられるか、という話になった。結論は、H&Mを超えようとすれば、上記に見える負のスパイラルから抜け出さないと超えることはできないということ。品質とコスト一辺倒でない、企業としてのブランド価値を見出せないと難しいのではないかという意見であった。

日系企業が敬遠される理由

 アパレルに限らず、日系大手の流通系と取引をする中国のサプライヤーから聞いた悲鳴は、今回が初めてではない。中国で雑貨を製造し、日本の流通大手に納めている業者が、最近長年付き合ってきた日本の流通大手との取引を丁重にお断りした。

 理由はコストの問題だけではない。リスクを全てサプライヤーに押し付けて、自分は一切リスクを取らない経営姿勢にこのまま付き合っても将来はないし、自分の社員を不幸にしてしまうと経営者が判断したからだ。先方のバイヤーに商材を提案して採用になったとしても、売れ行きが悪いと平気で返品を求めてくる。

 自分がリスクを取らないで、本当に消費者が望む商材を開発できないはずとこの経営者は考えている。それをするのであれば、場所貸業に徹するべきだ。その場合の利益は基本賃貸料のみになるが。仮に売れ行きが良かったとしたら、今度は平気で中国の工場との直接取引を求めてくる。認めないなら、今後取引しないと。これは完全にモラルの問題ではないか。多分不正競争防止法などコンプライアンス違反の可能性もある。

関連記事

新着記事

»もっと見る